アベル「……おい」
ラン「な、何?」
アベル「お前ってもしかしてニケのことが好きなのか」
ラン「えっ!!??」
ラン「い、いきなりどうしてそんなこと!?違うよ、ニケは友達!!」
アベル「よく庇ってるし、この間の模擬戦は一緒に観てたし」
ラン「あれは……!」
ラン「あれ……は……───」

私はサンドを持ったまま俯く。

ラン「か、庇うっていうか……ニケばっかり悪者にされるのが許せないだけだよ」
アベル「……なるほど」
ラン「ニケは大事な友達だから。衛生班の仕事も私は好きだったし」
アベル「……なるほど」
ラン「模擬戦の日だって、私はアサカに早く負けちゃって……それで不参加だったニケと一緒に……」
ラン「…………」

さっきまでのふわふわとした熱は、一瞬で何処かに消え去ってしまった。

そんなふうにアベルは私とニケのことを見ていたのだと思うと───鼻がつんと痛んだ。

泣いてしまうかも知れない、と思ったその瞬間、私はぐっときつく唇を噛み締めた。

ラン(昨日もニケのこと聞いてきたし……)
ラン(あれは……そういう意味だったの……?)


さっきまでとても美味しく食べられていたサンドの味も
全くしなくなってしまったし、もうここから立ち去りたかった。

私はこんな形で理解してしまったのだ。
もしかしてもしかしたら私がアベルのことを好きでも
アベルが同じ気持ちだとは限らないということに。

アベル「……妙なことを聞いて、済まなかった」
ラン「……ううん」
アベル「ついでにもう一つ聞いていいか?」
ラン「な、何?」
アベル「お前……───好きな男はいるのか?」
ラン「!!??」
アベル「あ……っ」
アベル「……いや、やっぱりいい」
ラン「ア、アベル……?」
アベル「何でもない!」
ラン「あ!?」
アベル「俺はもう食べ終わったから戻る!お前はゆっくり食べてろ、じゃぁな!」
ラン「アベル、待っ……!」

ラン「ちょっと……」

私は食べかけのバゲットサンドを持ったままベンチの前で立ち尽くしてしまった。
アベルの後ろ姿はもう全然見えない。

ラン「……何なの……もう……」

ページ上部へ