
 
		ラン「……っ」
		
		細い絵筆が肌に触れた瞬間、その冷たさに躯が小さく強張った。 
		
		パシュ「あ、ごめん!痛かった? これちょっともう古いから……」
		ラン「ううん、初めてだから少し驚いただけ。全然痛くないよ」
		パシュ「そっか、なら良かった。じゃぁ描いてくぞー」
		
		そう言ったパシュが、まるで本物の絵描きみたいにすいすいと私の手首に筆を這わせてゆく。 
		
		文字なのか模様なのか、私には分からない。 
		でも不思議に綺麗で、そして何よりも─── 
		
		真剣に、でも楽しそうに描いていくパシュの顔を眺めていると私も楽しくなってくる。 
		
		パシュ「これさ、放っておけば徐々に薄くなって一週間くらいで消えるから心配しなくていいよ」
		ラン「せっかく描いてもらったのにそれも何だかもったいない気がする」
		パシュ「いつまでも残ったら困るだろ」
		ラン「……そうかな」
		
		私は内心、ずっとあってもいいかなと思った。 
		模様の美しさもあったし、せっかくパシュが描いてくれたものを
		残しておきたいと思ったのだ。