ヴィルヘルム「な、何だこれ……」
ラン「綺麗だね……」

紫紺の夜空は、あっという間に数え切れない光で いっぱいになる。

埠頭に集うみんなは、 笑顔で自分のランタンを凝視めている。

ラン「…………」

そんな幻のように美しい夜を眺めながら、 私は村のことを思い出す。

ラン(……ああ、そうだ)

ヴィルヘルムに伝えたかったことが、私の中で柔らかく形を成した。

考えて、迷ったこと。
私は思ったままを伝えてみることにした。

ラン「……ねぇヴィルヘルム、さっきの続きだけど……」
ヴィルヘルム「あぁ?」
ラン「……多分だけど」
ラン「こういうのも平和の一つだとは思うよ」
ヴィルヘルム「……っ」
ラン「戦があったら、みんなこんなふうにはしゃいで いられないし、それに、この王都フロンティアは 魔法で護られてるって安心感もあると思う」
ヴィルヘルム「ああ……そんなこと言ってたな」
ラン「私は、これがずっと続けばいいなって思ってる」
ヴィルヘルム「…………」
ラン「確かにニルヴァーナは戦う人間が集められていて、戦がないとその役目は果たせないけど」
ラン「……もし、それで私が居場所を失っても、 やっぱり戦は起こって欲しくないな」
ヴィルヘルム「お前……」

ページ上部へ