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すべてが唐突だった。
淡い光に照らされた、完璧に整った顔容がすぐ目の前にきて――。
唇に、熱っぽい何かが触れていて。
何が起きたのか、わからない。
否、これが何かを知らないほど子供ではない。
だからこそ、信じられなかった。
時間が止まったかのような空白の後、唇が静かに離れる。
ルイ
「……彼は君を、無垢な人形に仕立て上げた。
美しく、気高く、疑うことを知らず、慈愛のために自らを犠牲にする人形だ。
心はあれど、君は必ず彼の望み通りの答えを選ぶ。
……巧妙に誘導されていることにも気付かずにね」
甘い囁き声が、茫洋としたままの頭の中に沁みこんでくる。
ルイ
「彼は、言わなかったか。……いや、彼が言わずとも他の誰かが言ったはずだ。
私に近づかないようにと」
ヴィオレット
「…………」
ルイ
「だが君はそうしなかった。何故か。……君はもう、その答えを知っているはずだ」
ヴィオレット
「わから……ない、わ……」
彼が発する言葉の意味が、わからなかった。
否、本当はわかりすぎるほどわかっていた。
わからないのは、こうしてここにいるわたし自身の気持ちだ。
すると彼は口元を緩ませ、見とれてしまうほど艶麗な微笑みを浮かべる。
ルイ
「ならば教えてあげよう。……何度でも」
ヴィオレット
「んっ…………」
先程とは明らかに違う、心が纏う殻を強引に剥がされるような口付け。
しかも、一度だけではない。
唇が離れたと思った矢先、再び唇を重ねられる。幾度も、幾度も。
ヴィオレット
「ん……ル、イ…………」
思うように息を継げず、口付けのたび、思考が無造作に掻き乱されていく。
言葉の刃で刻まれた心に、唇から伝わる柔らかな熱が甘く侵食してくる。
……まるで、毒のように。
だから、動けない。拒めない。
ヴィオレット
(――本当に?)
朦朧とした頭の中に、何故かそんな疑問が浮かんでいた。

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