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久世ツグミ
「きゃああ……───!?」
鴻上滉
「悲鳴は勘弁してくれ、近所に知られたら
俺が人攫いと勘違いされるだろ」
久世ツグミ
「だ、だったら下ろし……下ろし……っ」

猛烈な恥ずかしさで、言葉にならない。

鴻上滉
「背負うのが駄目なら担ぐしかない」
久世ツグミ
「お、下ろし、下ろして……っ」
鴻上滉
「暴れると地面に落ちて余計な怪我をするかも知れないぞ?
それで捻挫か運悪く骨折でもして、明日からの仕事に支障が出たらどうするんだ?」
久世ツグミ
「だ、だったら下ろして……」
鴻上滉
「大丈夫だよ、そんなに重くない」

そう言って、彼は私を担いだまま歩き出してしまう。

久世ツグミ
「歩けるから……下ろして……っ!」
鴻上滉
「本当に重くないって」
久世ツグミ
「そこが問題ではないのよ……っ」
鴻上滉
「じゃあ、いいだろ」

良くない、と言い掛けて私はとうとう観念した。

逃げたいくらい恥ずかしいけれど、暴れて
うっかり落ちたら、確かに怪我をする。

久世ツグミ
(大人しく、おんぶされるべきだったわ……)

まさか彼がこんな暴挙に出ようとは。

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