
- 峰岸誠司
- 「必ず目撃者がいるはずです。聞き込みの人員を増やしましょう」
- 人員の配置を考えながら、私は小さく息を吐いた。
 ――X-Day事件が終わろうが終わるまいが、世の中から事件が絶えることはない。
 さきほど、星野さんとも話したように。
 勝手な正義で裁きを与えていたアドニスが、抑止力になるなどと甘い考えだ。
 世の中には悪意を持った人間など、数えきれないほどいる。
 それこそアドニスよりも根が深い、信念などなくただ人を傷つけたいと考える者も。
 だからこそ警察は次から次へと起こる事件を、留まることなく対処し続ける必要がある。
 ……そう。
 私とていつまでも【過去の】事件に固執してはいられないのだ。
 自惚れでもなんでもなく、私が手掛ければ解決に導けるだろう事件は他にいくつもあるはずなのだから。
- 峰岸誠司
- (……わかっている)
- 峰岸誠司
- (それが国民の安全につながるなら、警察官として私情など捨てるべきだ)
- そう言い聞かせても、私の心の中には今もなお小さなしこりがある。
 それは、おそらく――。




































