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						- 笹塚 尊
- 「――おい、風呂上がったぞ」
						- 星野市香
- 「あ、はい。私も入らせてもらいますね」
						- とりとめのない想像を中断して、私はお風呂場へと向かおうと――。
 ――したところで。
 鼻をふわりとくすぐる香りと共に、白い肌が、目に、飛び込んできた。
						- 笹塚 尊
- 「あー……。髪乾かすのめんどくせえ……」
						- 普段の癖っ毛の面影がほとんどない、水気を含んでしっとりと流れる髪。
 肩口に引っかけたフェイスタオル。
 思ったより鍛えられている腹筋を、ゆっくりとなぞっていく雫――。
						- 星野市香
- 「…………」
						- 笹塚 尊
- 「…………」
						- その姿に目を奪われ、私は絶句したまま立ち尽くしていた。
						- 笹塚 尊
- 「……お前、何じろじろ見てんの?」
						- 星野市香
- 「……し、失礼しました……!」
						- 慌てて目を逸らすと、そのまま体ごと後ろを向く。
						- 星野市香
- 「と、というか、シャツぐらい着てから出てきてください!」
						- 笹塚 尊
- 「は? 意味わかんねえ。風呂上りは俺いつもこれだし」
						- 笹塚 尊
- 「わざわざ人ん家に来てまでファッションにケチつけるとか何様だ」
						- 星野市香
- 「裸はファッションじゃありません!」
						- 笹塚 尊
- 「…………」
						- 私の慌てる様子が面白かったのか、何やら背後でにやりと笑う気配がする。
 そして小さな足音と共に、湿り気を帯びたいい香りが、再び私の鼻をくすぐった。