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第三話 [ 一回戦 オルフェ VS 瑠璃 ]
ユベール
「一回戦で見せてもらうのは、姫を守るに値する戦闘力があるかどうかだ。
オルフェ、瑠璃、前へ」
オルフェ
「戦闘力か……。うーん……あんまり自信ないかも」
レオン
「こういうのこそ、ギスランが適任だったんだけどな」
ギスラン
「何にせよ、一回戦の勝敗は仲間の士気に関わってくる。
オルフェ、なんとしても勝て」
レオン
「おい、プレッシャー与えんなよ。
いいかオルフェ、できるだけ勝ってきてくれ」
ルイ
「レオン。君の言っていることは、ギスランと大して変わらないよ」
オルフェ
「えーと。とりあえず、努力はするよ」
茜
「瑠璃、手加減は無用ですの。やっちゃえですの!」
瑠璃
「オルフェ、最初に格の違いってものを見せてやるです!」
ヴィオレット
「ちょっと待って。ユベール、まさか二人に武器を持たせて戦わせる気じゃないでしょうね……?」
ユベール
「心配はいらないよ、姫。
二人には戦ってもらうが、手にするのは武器ではなく……マリオネット、例のものを」
ルイ
「……何やら場にそぐわないものが運ばれてきたようだが」
レオン
「ああ。つか、どっか持ってきたんだあれ……」
ヴィオレット
「これは……何?」
ユベール
「この勝負のために地上から取り寄せた、紙風船、ヘルメット、ハリセンだよ。
危険なものでないか、手にとって確認してもらって構わない」
ヴィオレット
「……? ただの紙のようだけれど、これが風船なの?」
オルフェ
「ヴィオレット、貸して。これはね、こうやって……ふー……」
ヴィオレット
「! 膨らんだわ!」
茜
「おもしろいですの……。オルフェ、もう一回ですの!」
オルフェ
「いいよ。ふー……」
瑠璃
「すごいです、さっきまでぺちゃんこだったのに……!」
ヴィオレット
「オルフェは紙風船のこと、知っていたの?」
オルフェ
「うん。これ、子供の遊び道具としてウィエに伝わってるものだから。
でも、こっちの……ハリセンとヘルメット……だっけ? これは、見たことないな……」
ギスラン
「ヘルメット、だったか。それはおそらく頭部を防護する兜のようなものだろう」
ヴィオレット
「なるほど。でも、このハリセンは……? どことなく揚羽の扇子に似ているけど……」
ルイ
「文献で見た事があるんだが……、それはウィエの一部の民が使用する道具の一種だよ、姫」
ヴィオレット
「道具……? 使い方があるの?」
ルイ
「ああ。振り上げて振り下ろすと言う、実にシンプルな使い方がね」
ヴィオレット
「振り上げて、振り下ろす……。風を送る道具ということ?」
ルイ
「いや。使い方については、宰相殿が説明してくれるだろう」
ギスラン
「どうでもいいが、そんなもので戦いになるのか?」
ユベール
「なるとも。まず、オルフェと瑠璃には、この紙風船をつけたヘルメットを各自頭にかぶってもらう」
瑠璃
「えっ。頭に……ですか?」
オルフェ
「ちょっとそれ、恥ずかしいな……」
ユベール
「このヘルメットは、安全のために必ずかぶってもらう必要がある。
なぜなら君たちには、これからこのハリセンで互いの紙風船をつぶしあってもらうからね」
ヴィオレット
「つぶした方が勝ち……ということ?」
ユベール
「その通り。ちなみにハリセン以外の武器で危害を加えた場合は、失格とする」
ヴィオレット
「頭は守られているし、それなら危なくないかしら……」
ギスラン
「レーヌ、そんな甘い考えでどうする。これは戦闘力を試す勝負なのだろう?
ならば、命をかけた決闘をすべきだ」
ヴィオレット
「それは許可できません。そもそもこの勝負は、瑠璃と茜がみんなを巻き込む形で始めたのだもの。
それであなた達が傷つくようなことはさせられないわ」
ギスラン
「ふん。決闘だと果たし状には書かれていたが、飛んだ茶番だな。決闘というのは、もっと命がけの――」
ユベール
「それは地上での話だろう。パルテダームにはパルテダームの流儀がある。
この場に来たからには、こちらの流儀に従ってもらおうか」
ギスラン
「くっ……!」
ヴィオレット
(困ったわね……。だまし討ちのような形でこの場に呼んでしまったし、ギスランが納得できないのも無理ないわ。一体、どうしたら……)
オルフェ
「ヴィオレット、大丈夫だよ。僕に任せて」
ヴィオレット
「オルフェ……?」
オルフェ
「ねえ、ギスラン。僕、思ったんだけどさ」
ギスラン
「……なんだ。おまえまで小言を言うつもりか」
オルフェ
「違うよ。ユベールには、何を言っても言い負かされちゃうでしょ?
でも、僕たちが勝ったら……さすがに何も言えなくなるんじゃないかな?」
ギスラン
「! 確かにあいつを完膚なきまでに黙らせるには……それしかないな」
オルフェ
「ギスランは僕より強いし、一緒に戦ってくれたらかなり心強いよ。
でも、嫌なら……仕方ないよね」
ギスラン
「……まあ、なんだ。そこまで言うなら、協力してやらんこともない」
オルフェ
「ほんと? あー、良かった。一緒に頑張ろうね、ギスラン」
ヴィオレット
「あのギスランを納得させてしまうなんて……。すごいわ、オルフェ」
レオン
「あいつのああいうとこ、なんつーか……たまに怖ぇよな……」
ユベール
「さて、マリオネットがヘルメットに紙風船をつけ終えたようだ。
二人とも、早速ヘルメットをかぶってもらおうか」
瑠璃
「うう。これも姫様のため……ぼく、男を見せるです!」
オルフェ
「う、うん……。これでいい……?」
レオン
「い、いいぞ、オルフェ。よく……似合ってる」
オルフェ
「笑いを堪えつつ言われても説得力ないよ! 他人事だと思って……!」
ギスラン
「人前であんな姿になることは、俺にはできん……」
ルイ
「おや、珍しく気が合うね」
ヴィオレット
(少し可愛いと思ってしまったけれど……。オルフェには言わないほうがいいわね……)
ユベール
「……どうせなら、他の騎士にかぶらせたほうがいい笑いものにできたな……」
ヴィオレット
「? ユベール、今何か言った?」
ユベール
「いいや。各自ハリセンも手にしたようだし、開始の合図は姫に任せるとしよう」
ヴィオレット
「わかったわ。では第一試合……始め!」
瑠璃
「こういうときは先手必勝に限るです。オルフェ、覚悟ですー!」
オルフェ
「わわっ!」
茜
「もうちょっとだったのに、避けられたですの……!」
レオン
「いいぞ、オルフェ。今度はこっちから攻撃だ!」
オルフェ
「って言われても……」
瑠璃
「一度失敗したくらいじゃへこたれないです! 攻撃あるのみですーっ!」
オルフェ
「うわ!? あ、危ないなあ、もう!」
ギスラン
「オルフェに攻撃の隙を与えない気か。あの様子では、攻撃に転じられないぞ」
オルフェ
「困っちゃったなあ……ひとまず距離を取って……」
瑠璃
「逃がさないです!」
オルフェ
「わ! だから危ないってば……!」
茜
「いい感じですの、瑠璃! それにしてもオルフェ、さっきからちょこまか逃げてばかりですの……!」
ヴィオレット
「かなり押されているようだけれど、大丈夫かしら……」
ルイ
「確かに一見すると押されているように見えるが、あの攻撃をオルフェは最低限の動きで避けつつ、距離を取ろうとしている。
まだ勝負の行方はわからないよ」
瑠璃
「はあ、はあ……。まったく手ごたえがないです……!」
ヴィオレット
「ひょっとして、オルフェは瑠璃の体力を削ろうとしているのかしら?」
レオン
「確かに瑠璃のスタミナが切れたら、オルフェが断然有利になるよな」
ギスラン
「オルフェは、最初からそれを狙っていたということか……!」
瑠璃
「姫様が見てるのに、こんなところで負けられないです。絶対に勝つです……!」
オルフェ
「瑠璃は本当にヴィオレットのことが好きなんだね。
でも……僕も彼女の騎士になったからには、負けるわけにはいかないかな?」
瑠璃
「守ってばかりじゃ、ぼくには勝てないです!」
オルフェ
「っ……! ――お、っと」
ヴィオレット
「あら? オルフェが何か落としたわ。あれは……」
瑠璃
「あっ、マフィン!」
茜
「瑠璃、ダメですの。お菓子に気を取られたら……」
オルフェ
「隙あり」
ぺしゃり。……と音を立て、瑠璃の頭の紙風船が潰れた。
瑠璃
「あっ! あああああああーっ!!!」
レオン
「よくやったオルフェ! これで俺たちの勝ちだ。そうだよな、ヴィオレット?」
ヴィオレット
「え、ええ。瑠璃、残念だけれど……」
瑠璃
「……はい。そういうルールでしたし、お菓子に気を取られたぼくが悪いです……」
ヴィオレット
(かなり落ち込んでしまったわ。あれだけ勝ちにこだわっていたものね……)
瑠璃
「お菓子に弱いっていうぼくの弱点を巧みに利用するなんて……。
オルフェは思ってた以上にできるやつです……」
オルフェ
「そんなことないよ。
……さっきのお菓子も、ヴィオレットにあげようと思って持って来てただけだし」
瑠璃
「え?」
オルフェ
「ううん、なんでもないよ。……にしても、開始早々の瑠璃の攻撃はすごかったね。
これまでヴィオレットを守ってきただけのことはあるなあって思ったよ」
瑠璃
「そ、それほどでもないです」
オルフェ
「謙遜しないで。今回は勝てたけど、僕も騎士としてもっと強くならないといけないよね。
気付かせてくれてありがとう、瑠璃。よかったら……そのお菓子、もらってくれる?」
瑠璃
「……はいです。
オルフェは戦うのには向かないかもしれないですけど、他の騎士にはない、心の広さがあるです」
レオン
「おいっ! さりげに俺たちをバカにすんなよ!」
瑠璃
「べーっだ。事実を言ったまでですー」
ヴィオレット
(瑠璃、立ち直ってくれたみたい。これもオルフェのおかげね……)
ギスラン
「真の強者は敵をも味方にする者というが……オルフェ、侮れんな」
ルイ
「ふふ……、彼は存外、強かなところがあるようだ。覚えておこう」

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