あー、これから俺とケテルが【緋色の欠片】について説明したいと思う。

人に教えるのはどうにも苦手だが、なるべくわかりやすい説明を心がけるつもりだ。
ま、2人いるんだからなんとかなるだろ。

期待してるぜ、ケテル。

ああ。だが、私は【緋色の欠片】について詳しくは知らない。

ここは実際に経験した鬼崎が説明し、
私が適宜質問する形を取るほうが妥当だろう。

……じゃあ俺が説明、おまえが質問で話を進めていくぞ。

早速だが、鬼崎よ。
【緋色の欠片】とはなんだ?

いきなり直球だな……。
んー、簡単に言うと鬼斬丸を巡る戦いだな。
鬼斬丸ついての説明はいらないだろ?

ああ。
だが、それではなぜ彼女が戦いに巻き込まれたのか、の説明が不足している。

少し説明を省きすぎではないか?

……だから人に教えるのは苦手だって言ってるだろ……。

はあ。あいつがこの村に来た理由を説明する。
そうすれば、戦いに巻き込まれた理由もわかるだろ。

それでお願いする。

あいつは……、鬼斬丸の封印が風前の灯火になっていたときに、
鬼斬丸を封印する者として季封村に呼ばれたんだ。

鬼斬丸は玉依姫しか封じられないのならば、
彼女ではなくとも当代の玉依姫が封じれば良かったのではないか?

そうしたいのは山々だが、当代の玉依姫であるババ様の任期は過ぎていた。

ババ様には鬼斬丸を封じることはできなかったんだよ。

ふむ。だから、彼女が玉依姫になるしかなかったわけか。

しかし、よく承諾したな。
いきなり季封村に呼ばれて、玉依姫として鬼斬丸を封じろと言われたら戸惑うだろう。

まあな。俺たち守護者と違って、あいつは季封村にずっといたわけじゃない。
すぐには納得できる話じゃないよな。

だけど、あいつは玉依姫としての宿命を受け入れた。
それは……、生半可の覚悟じゃなかったと思う。

……そうか。
彼女は葛藤しながらも宿命を受け入れ、鬼斬丸を封じることに成功したのだな。

まあ、封じるまでに色々とあったんだけどな。
俺たちもだが、あいつも命の危機には何度もさらされたわけだし……。

鬼斬丸は強力なアーティファクトだ。
その力を狙い、おまえたちに襲撃をかける勢力がいても不思議ではない。

そうなんだよな。封印も弱まってて大変な状況なのに、
さらに俺たちより強力な敵が現れたんだぜ?

強力な敵……【ロゴス】のことか。

ああ。守護者総がかりで戦っても、
ロゴスのメンバーの1人とまともに戦えないくらいの戦力差だ。

一時期はあまりの戦力差にやけになったこともあったけど、
あいつのおかげで立ち直れたんだよな。

……なるほど。やけになったということは、
そのまま道を踏み外してしまったのだな。

あいつに八つ当たりっぽいことはしたけど、道は踏み外してないぞ。
というか、どこでその知識は仕入れたんだ?

本だ。やけになるとほぼ100%の確率で道を踏み外し、
そのまま坂道を転げるように転げ落ちるそうだ。

確かに鬼崎は……坂道を転げ落ちるタイプに見える。
赤髪になったら要注意と書いてあったからな。

これは地毛だ!

……と、とにかく話を戻すぞ。
俺たちとロゴスの戦力差は歴然としてたわけだ。

だが、おまえたちはそれを退けたのだろう?

あいつがあきらめるなって言ってくれたからな。
だから、俺たちは何があってもあきらめなかった。

ふむ。彼女の力があったからこそ、ロゴスを撃退できたわけか。
信頼の力が絶対の力に勝る。実に興味深い。

俺たちの絆と、玉依姫として覚醒したあいつの力を併せて
――鬼斬丸を封じることができた。

あいつ以外が玉依姫になっていたら、きっとこうはいかなかったんだろうな。

報告書である程度の内容は知っていたが、当事者から聞くとまた違った発見があるな。

これは早速帰って内容をまとめなければ……。

以上が、【緋色の欠片】で起きた出来事だ。
えー、説明が終わったから帰っていいのか?

いや、この後に次に何を説明するか、について話さなければいけないらしい。

次は【ロゴスと典薬寮について】で、祐一と卓だ。
よければ聞いてみてほしい。

あの2人なら俺たちよりうまく説明してくれるだろ。じゃあ、またな。

さらばだ。
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