「――おや、初めてのお客さんですね。
私はメレニス・レヴィン。人の運命を視るフォーチュンテラーです。
ここへ占いに来たということは、これから起きる運命を知りたいのでしょう？
貴女が今一番気になっている未来は……７日後のことですか。かしこまりました。
――……。貴女の運命は――ん？ えっと……（小声）未来が……ない……？
あ、いえ、何でもありません。
そうですね、確定された運命……かどうかはわかりませんが、
きっとまた貴女に会える予感がしております。スイートで……スパイシーな……
すみません、こんな曖昧な言い方は私も初めてですが……
全ては運命の導きのままに――Right？」

「るん、る、るーん。あの子とのハネムーン旅行まで、あと６日だ～！
やりたい事リスト、準備よし。話したい事リスト、準備よし！ ラブレター、準備よし！
はぁ……まさかこの日を迎えられるなんて、夢にも思ってなかったよ。
彼女に片思いして、失恋して……二年ぶりに再会して、想いが届いて、結婚して。
好きな気持ちを我慢しなくていいのが、こんなに幸せなんだって知ってからは、
抑えが全く利かなくなっちゃってるけど……あはは（照れ笑い）。
あっ、そうだ！ モバイルバッテリー、もう一つ用意しておこうかな。
彼女の写真いっぱい撮るから、スマホの電源の減りがいつも早いんだよね。
はっ！ それとも一眼レフカメラを買っちゃうとか？
――『俺だけの天使フォルダ』高画質化計画。うん、いいかも！
よし、早速お店見てこよっと！ るぅ、る、る、る、るーん～～」

「結婚式を挙げてから、もう数日が経つのか……。
相変わらず、お互い仕事は忙しいが、共に過ごせる時間を作るようにしている。
だが……困っていることはないだろうか？ 不満はないだろうか？　
休みを取って、ゆっくり話す機会を作りたいのだが……
た、例えば……『ハネムーンに行きたい』と私が提案したら、彼女はどう思うだろうか。
もし、彼女がハネムーンに興味が無かったとしたら……
余計な負担をかけてしまうのではないか？
そうだ、ハネムーン・プロジェクトに向けて、マイルストーンを置こう。
今夜、彼女の仕事の状況を探り……明後日は、ソファ横のテーブルに旅行雑誌を置く。
明々後日には、旅行についてどう思うかを、あくまで雑談の一つとして軽く問い、
そして……５日後には、はっきりと誘う！ よし、この流れで行こう。
明後日に使用する旅行雑誌は、責任重大だな。もし彼女が中を開かなかったとしても
表紙だけで心惹かれるようなものでなければならないだろう。
よし、早速リサーチ開始だ」

「あはは、今日もスペシャル・エフェクト・メイクのスクール楽しかった～！
プロフィールの特技に書けることを増やそうと思って、ゆる～く始めたけど――
“あなたはアバンギャルドな鬼才！ 我が道を突き進め！”って先生に褒めらたし、
本格的に続けてみようかな～。絵描くの得意だから、向いてると思ったんだよね！
はっ！ せっかく上達したから、メイクしてサプライズであの子の前に登場してみよう！
うーん、でもハロウィンぐらいの簡単なメイクだとファンの子たちに見つかって、
またマネージャーに怒られそうだよなー。
（ちょっとマネして）『ちょっと！ 何考えてるのラウル！！
俳優としての自覚が足りない！』ってさ。
はぁ……自覚はしてるんだけど、あの子の方が大切ってだけなんだよね。
あっ、思いついた！ アレになればいいんだ！ 特殊メイクだからこそできるアレに！
そうと決まったら、準備しなくちゃ！ Ｘデーは４日後。よーし、レッツ・サプラーイズ！」

「ふーん。ロサンヨーク美術館で、
特別展『インテリアとForever Love』なんてやってるんだ。
――“太古の昔から、永遠の愛と家具は切っても切り離せないもの。
恋人たちの愛の軌跡を辿る”――へー、確かに『嫁入り道具』とかあるしね。
あいつも好きそうなテーマだから、誘ってみるか。
今はまだ同棲してないけど……け、結婚したら一緒に住むんだし、
彼女のインテリアの好みも把握しておいた方がいいからね。
僕が選んだモノは間違いなくお洒落で、落ち着く空間になるけど、
どこまでいっても僕しかいない。
だけど、彼女が選んだモノもあれば、彼女を感じて、お互いが混ざり合って……って、
もちろんファッションデザイナーとして自分のセンスを貫くことも大切にするけど、
あいつと出会ってから、少し考えに余白を持てるようになった気がする。
ふふっ、次のデートは３日後だね。今から楽しみだ」

「彼女との結婚式。
と言っても、普通の式とはだいぶ違うけどな。――悪魔が神の前で誓い合う。
許されざる行為かもしれないが、彼女には人間としての幸せも感じて欲しいからね。
さて、ブーケを作るか。
純真な彼女に似合う花は……バラ、ユリ、コスモス。
ああ、同じ花でハーバリウムも作ろう。
この素晴らしい日の想い出を、一生色褪せず閉じ込めておきたいからな。
――永遠の愛を誓える日まで、あと２日。
何百年よりも長く感じそうだよ、マイハニー。」

「ぢぃ。眠れん、眠れんぞ。
“かいみんぐっず”をいくつも試しているが、中々効果があらわれぬ。
人間界には“寝る子は育つ”という言葉があると聞いたのでな。
あ、あくまで、人の子への理解を深めるために試しているだけだが、
育てば、彼女に頼りにされる男に……夫に、なれるだろう！
寝て育った明日の私は、“にゅーばーじょん”の私だ！
ちー。何としてでも寝るぞ！
次はこの……『インキュバスに夢を食べられても気が付かないほどの
熟睡を提供するアイピロー――睡魔王サタン』を……ちっ！
これはサタンになってしまうのか！？ それは怖いぞ！ 無理だ！
他にしよう。他は……『スイート＆スパイシーな夢をアナタに――激爆睡抱き枕２』。
おお！ これは良さそうだ。早速試してみよう。ちー！」

「ついに今日は、待ちに待ったハネムーン旅行に出発する日だね！
はっ！ つまりは記念日！ カレンダーに追加して、毎年祝わなきゃ！
あ、ハネムーンって、ラブラブな新婚一カ月くらいの時期の事を指すらしいんだけど、
俺たちはずっとラブラブだから……その場合はどう呼べばいいんだろう？
ハネイヤー？ ハネタイム？ ハネデイ？　うーん……。
ん？ ハネムーンのままでいい？
お互いが同じ気持ちなら、呼び方なんて関係ないから……か。
そっか。それもそうだね！ あははっ、君の細かい事に囚われないところも大好き。
（咳払い）――ねえ、俺と一生ハネムーンを過ごしてください！　愛してます！
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売～！
さあ、行こっか！　お手をどうぞ、お嬢様。そして――俺の奥さん！」

「おはよう、今日もお前は早起きだな。（小声で）ハネムーンを彼女に想像させるには……
（咳払い）こんな風に朝早く起きた日は、ベッドの上で鳥の鳴き声を聞きながらモーニングを取り、
ホテルの窓から見えるビーチで思いっきり泳いだら気持ちがいいだろう。
泳いだ後は、ふかふかのガウンを着て、ビーチチェアで寛ぐ。
もちろんフルーツパフェを食べながら――。
ん？ この数日、私の様子が変……だと？
普段は仕事の話ばかりなのに、どこか体調でも悪いのではないかって？
ん゛ん゛っ、た、体調は悪くない！ すこぶる良好だ。
……ふっ、やはりお前に隠し事はできないな。
実は一つ、提案があったんだ。先に顔を洗いに行こう。その時に話す。
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売だ。
引き続き、弊社『キューピット・コーポレーション』も、宜しく頼む」

「ハァイ！ 仕事、お疲れ様！　（英語発音っぽく）サプラァーイズ！
グルルルルー！　グルッ！
って、ちょ、ちょっと待って、オレだよ、オレ！ （小声）ラウル！
ふぅ……まさか逃げられるとは思わなかったよ。
それだけ、メイクが完璧だってことだよね！
どうかな！ スペシャル・エフェクト・メイクを習ったんだよー！
これで、変身が上手いプロテウスみたいになれるよね！
あ、ちなみにプロテウスは、ネプチューンの子じゃないかって言われてて、
予言の能力も持ってるんだけど――ん？ 何のテーマでメイクしたかって？
マンティコアだよ！　ほら、前に遺跡から落っこちて、洞窟探検した時に遭遇したでしょ？
え？　『ヤシの木を頭に乗せた、サンタクロースのコスプレをしてる宇宙人』に見える？
まさか――って、うわっ！　いつの間に人だかりができてる！
逃げるよ……！　ほら、手かして！ グルルルル～！！
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売！」

「お待たせ。
へー今日のコーデ、いつもとテイストが違うけど、あんたにすごく似合ってる。
厚底のローファーで視覚的に重さを持たせた分、
トップはベルベットのハットで触感的な重さを入れてバランス取るなんて、
もう上級者のやり方だよ。
てか、その服全部初めて見たんだけど……ん？ 今日の美術館デートのために買った？
……そっか、だからこの場所にもビッタリなんだ。
（小声）……なんか嬉しいな、こういうの。
僕とのデート、楽しみにしてくれてたって事でしょ。
ううん、何でもない！
じゃあ行こう、特別展『インテリアとForever Love』のチケットはもう用意してあるから。
――これから一緒に住むだろうし、展示見ながらあんたの好み色々教えてよ。
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売」

「おはよう。今日は一生の想い出になる日だ。
――何百年もキミを後ろから見続けてきたけど、今はこうして隣を歩ける。
俺にとっては、それだけで十分過ぎる幸せだよ。
この日々は、この時間は、キミがプレゼントしてくれた奇跡なんだ。ありがとう。
これ以上何かを求めたら、それこそ神の怒りを買いそうだけど、
願わくば、俺にキミの笑顔を守らせて欲しい……夢の中でも、現実でも。
一生をかけて、キミを――ふっ、この続きは神の前で誓うよ。
さ、そろそろ教会に向かおうか、マイハニー。
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売」

「ちぃ……結局眠れなかった。
今日は寝て育った“にゅーばーじょん”の私を彼女に見て欲しかったのだが……。
何事にもビビらず、もっと、力強く、素晴らしい男になるには、どうしたら良いのだ……
ホラー映画でも観――
ちー！ あ、ああ、お前か！ すまぬ、急に声をかけられて驚いてしまった。
む？ 昨日から私の様子が変だと？
へ、変ではないぞ。
ただ、今日に向けて（小声）育ちたかったのに……（普通）眠れなかっただけだ。
ん？ 翌日のイベントが楽しみで眠れない“えんそくまえのこども”みたいで可愛い……？
そ、そうか！　この状況は“可愛い”のか！　知らなかったぞ！
うむ！ では、ずっと私は眠れないぞ！ お前と会うのが毎日楽しみだからな！
可愛いだろう！ ちー！
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売。
ちぃ、ち～！！」

「ほら、またお会いできたでしょう。
ふふ、フォーチュンテラーの予感も捨てたものではありませんね。
……未来が視えぬ貴女とお会いしてから、ずっとこの一週間考えていたのです。
運命は最初から決まっていて、その導きのままに皆過ごしている。
その人を視れば分かります、私の運命でさえ。予定調和な日々です。
でも、貴女の運命だけは視えない。こんな事、初めてです。
これから何が起きるのかが分からないのです。
だからこそ、運命の視えない貴女といることが、私の運命のように感じています。
すみません、なんだか話が矛盾していますね。
ですが、私は今楽しくて仕方がありません。 わくわくしております。
モアースイート、モアースパイシー。より甘く、より刺激的に。
元・女神……いいえ、私にとっては女神ですね。女神×婚活ラブコメディ！
『キューピット・パラサイト スイート アンド スパイシー ダーリン』本日発売」