亮

「なーなーー、センセー。どこから食べる？」

亮

「ケーキ？　それともアイス？　あっ、ソフトクリームもあるよ！」

暦

「うーん。やっぱりここのケーキからがいいんじゃないかな。
ちょっと不安定そうだし」

亮

「あー、たしかに横のアイスが溶けたら
ぐしゃーって行きそうだよな。
花火からも近いし」

そう言いながら、
亮くんはじっと花火を凝視する。

亮

「……この花火、食べれたりすんのかな？」

暦

「えっ！？」

亮

「試しに食べてみよーっと……」

暦

「わー、ダメダメ！　やけどしちゃうよ！」

亮

「でも、横に刺さってるクッキーと形似てるし……。
ちょっと、かじってみるだけなら……」

暦

（うっ。亮くんの目、キラキラしてる……！）

亮

「ね、センセー。いいでしょ？」

暦

「そ、そんな目で見てもダメなものはダメ！」

亮

「あっ！
さては……センセーも花火食べたいの？」

暦

「えっ、ちが……」

すると亮くんは、しょんぼりとしながら
パフェを差し出してこようとする。

亮

「センセーが食べたいなら……諦める。
はい、食べていいよ」

暦

「そ、そういうわけじゃ……なくて。
私はただ、亮くんが怪我しないか心配で……」

亮

「…………」

暦

「……ん？　どうかした？」

亮

「ううん。ただ……オレって頑丈だから、あんま心配されたことってなくてさ」

亮

「だからかな。
なんか……今の、すっげー嬉しかった！」

暦

「そ、そんな……これくらい普通だよ」

亮

「センセーの【普通】は【普通】じゃないんだって。
ありがと、センセー！」

亮くんは私の他愛ない言葉に
純粋に喜んでくれているようだった。

亮くんは素直なせいか、
普通の人だったら照れて言えないようなこともすんなりと言ってくれる。

暦

（……そんな風に言われるの、私だって初めてなんだけどね）

暦

（なんだか照れるなあ……）