
- 紫苑
- 「冷めないうちにどうぞ」
- 暦
- 「い……いただきます……」
変な緊張感に支配されながらも、
まずは奥にある肉じゃがに手を付けてみる。
- 暦
- 「……うぐっ。こ、これは……」
- 紫苑
- 「どうですか?」
- 暦
- 「お……美味しい、です。
私が作ったものよりも……」
- 紫苑
- 「ふふふ、そうですか。
それは何よりです」
- 暦
- 「ず……ずるいです」
- 暦
- 「なんで、こんなにジャガイモを
煮崩れしないまま柔らかくできるんです?
どうしてこんなに味が染み込むんですか?」
- 紫苑
- 「レシピの通り作っただけですよ」
- 暦
- 「でも、手際だってすごくいいし!
この短い時間でここまで出来るなんて……」
- 紫苑
- 「まあ、私も1人暮らしが長かったですから。
一通りのことはできますよ」
- 暦
- 「でも、いくらなんでも……」
- 紫苑
- 「いくらなんでも?」
さっきから紫苑さんは、
にこにこと笑って私を眺めている。
- 暦
- (ハッ……!
もしかして私、面白がられてる?)