
- 春玄! 聞いてくれ! 9月17日に拙者たちの戦いがげえむというものになったそうだ!

- ゲーム? ああ、たしか娯楽の一種だったな。

- 然様。そのげえむで我が殿・義経殿の活躍が見られるのだ。これは是非、拙者たちも見てみたいと思わぬか?

- 凛々しく剣を振るうお姿や、民に対し思いやりを向ける優しいお姿……想像しただけで心が温まる。

- そうだな……遮那も頑張っていたし皆でふり返ってみても――。

- ちょおーーーーーっと待ったあああーーー!!

- !?

- 二人で語り合うのは一旦止めてもらおう!

- 忠信殿! 継信殿まで! 一体どういうことだ?

- ふっふっふ、それはな弁慶。今日は発売記念企画をやるからだ!

- ゲームが発売されたことを受けて各自、自分もしくは自分のルートがどれだけ魅力的かアピールしてもらいます。

- うん?

- もちろん、まだ遊んでいない人のためにネタバレしない程度の内容でな!

- 題して! 『発売後の緊急プレゼン大会!俺といるのが一番幸せだよ選手権』~~!

- ほう、よくわからぬが面白そうだな。

- わかってないのに乗る気か、弁慶。と言うか、そもそも人が足りないんじゃ?

- もちろん抜かりはないぜ! おーい、高綱!

- はーい! お待たせ~~~!! ちゃんと頼朝様を連れてきたよ。

- 私は参加するつもりはない。祝いたいのなら皆でやっていろ。

- もー、頼朝様ってばまだそんなこと言って! 今日の仕事はおしまいだよ!

- だが。

- 大丈夫! こういう時は景時殿がまるっと全部やっておいてくれます!

- 勝手に消えたら怒られるんで、今日はちゃんと『お願いします』って置き手紙もしましたよ!

- ……。

- 頼朝殿、眉間の皺がすごいぞ。大丈夫か?

- ま、まあここまで来たんだ。少しは付き合ってくれるんじゃないか?

- はあ……だから私は――。

- うわー、見てよ兄上。源氏の奴らが馬鹿っぽい話をしてるよ。

- ふふ、そのようだね。

- どうでもいいな。

- !

- 重衡に知盛、教経まで……!

- あははっ、面白そうなことするって聞いたからわざわざ出向いてあげたよ。

- 私も重衡も義経と遊びたくてね。立場的に参加する権利はあるだろう?

- おい、すぐに義経を出せ。逃がすつもりはないぞ。

- く~~~っ、何だよこの上から目線は。呼ぶ手間が省けたのはいいけど!

- ちなみに義経様はここにはいらっしゃいませんよ。平家側に拐かされては事なので。

- なんだと!? く……それでは来た意味がないだろう!

- ふむ、これは残念だね。では実力行使ということになるのかな。

- いいね兄上。暴れられるなら俺は何でもいいし♪

- ! なんと好戦的な。しかし無暗に争うわけにも――。

- いや、止めずとも良い。

- 頼朝殿?

- 力で来るなら拒みはせぬ。勝負だ、平家……!

- え!?

- ここできっちり返り討ちにしてやる。積年の想い、ここで晴らさせてもらおう!

- いいね。では、我々が勝ったら義経の居場所を教えてもらうよ。

- え、頼朝様まで乗っちゃった! これってかなりまずくない?

- ああ。……忠信!

- わかってる! はああ~~~っとぉ!!

- ! これは……。

- 太刀が消えた……!?

- ここでの刃傷沙汰はナシです! というわけで武器は全員没収しました!

- 煙のように消えるなんて……一体どういう仕組みなんだ?

- 今日だけのご都合主義パワーです。

- よくわらかぬが、すごいな。

- というわけで全員、自己アピールだけしてくださいね。進行役は私たち佐藤兄弟が行います。

- ったく強引だなあ。まあいいや、興も削がれたし勝手にすれば。

- おう。ならまずは教経からにするか!

- はあ!? な、何故俺なんだ。

- ほら、平家の中でも猪突猛進というか一番槍っぽいから適任かなと。

- ふん、アピールなどくだらない。俺は義経と勝負がしたい、ただそれだけだ。

- まーだ言ってる。ほんと戦馬鹿だよね。教経といたら戦ってばかりになりそう。

- 敵同士ならば当然だろう。だが……。

- 俺は奴の強さだけではない、上手く言えないが生き様にも心惹かれている。

- いつかどこかで、その理由がわかればいいとは思う。だから奴とは絶対に勝負をする。そこは譲れない。

- おお……敵ながらなんか恰好いいな。

- 教経らしいね。

- でも、かなり固くない? もっと楽に生きればいいのに。

- お前が適当すぎるんだ。

- へえ、教経ってこんな人だったんだね。ここから義経様とどう仲良くなっていくんだろ?

- 仲良くだと? 俺が奴と? ふん、馬鹿げた話だ。

- ですが、この作品は乙女ゲーム。義経様と教経が親密になる道はあります。

- お、おとめげーむ……?

- 教経は初心だからね。知らない方が良いんじゃないかな。

- おい待て、知盛。知っているなら説明を――。

- 俺も兄上にさんせーい。教経はちょっと黙ってなよ。

- むぐー!!

- では、どんどんいきましょう。次に話すのは……。

- ならば拙者に任せてくれ!

- 弁慶?

- 平家側の教経から始まったのだ。次は源氏側の誰か、ということになろう。

- ならば殿の一の家来である拙者が先陣を切ろうと思ってな!

- お、これは頼もしいな! じゃあ弁慶、任せるぜ。

- うむ。拙者のあぴーるぽいんとはずばり包容力だ!

- 包容力? たしかに弁慶って大きいし安心感があるよね。

- 身体も丈夫に出来ておるしな。殿には、何があってもお守りすると誓い申した。

- 窮地に陥れば一番に駆けつける。憂い事があれば、この手で取り除いて差し上げる。

- そうしてお支えすることこそ拙者の道。この立ち位置は誰にも譲らぬ。

- おおー、従者の鑑って感じだね。

- でも、いつだって守りますーってだけじゃどのルートでも変わり映えしないんじゃない?

- そんなことはないだろう。弁慶は最年長だし大人の魅力が一番あるような……ないような。

- フォローするなら最後までやり切りなさい、忠信。

- あ! 弁慶って、こう見えてわんこっぽいよね? 俺、そこもアピールになると思うな!

- わんこ?

- ああ。義経様と弁慶を見ていると微笑ましい空気は感じるな。

- たしかにな。破戒僧と聞いていたのに話して見ると随分と印象が違うというか。

- なるほど、微笑ましい……か。そう言われると、照れくさいが嬉しいものだな。

- 殿に安らぎを与えられる存在となれれば拙者も本望にござる。

- 弁慶はどのルートでも頼れて癒しにもなる相手ってことだね。

- 精神的に辛い局面も出てくるだろうし、こういった存在は貴重かもしれないな。

- そこで私を見ないでもらおうか?

- これは失礼。根が素直なもので。

- わああ、また不穏な空気になってるぞ! ええと……じゃあ春玄、次は頼む!

- え、俺か?

- おお、春玄も頼もしいぞ。共に殿をお支えする良き仲間であり、敵わぬ部分もあると思わされる相手だ。

- っ、弁慶。急に何を言うんだ。

- おぬしは殿と幼き頃から一緒だろう。それ故、ふとしたことでも通じ合っているようで少し羨ましいと思うことがある。

- そうか……いつだってあいつの助けにはなりたいと思っているし、実際そうなれているならほっとするな。

- 春玄のアピールポイントは一番の理解者であるところだな。

- だといいんだが。こうして鞍馬を出たんだ、このまま安穏としているわけにはいかないだろう。

- これからも、ちゃんとあいつを支えられるよう俺も成長していく。そんな姿が見せられてるといいなと思うよ。

- うわー、優等生的発言。

- そこが春玄のいいところだ。

- だな。それに義経様からしたら、身近だった存在が急に成長してそれに戸惑い、意識してしまうってヤツだろ。

- これってかなり良いポイントじゃないか?

- わー、王道の展開だ! そういうのが好きな人っているよね。

- ……先程から気になっていたのだが高綱たちは妙に色々と詳しいな。

- ふふ、今日はそういった役回りなので。

- あ、じゃあ次は頼朝様が話す? なんだったら俺が代弁してもいいよ。

- ちょっと、さっきからそっちばっかり話してない? 暇なんだけど。

- 私はあとでも構わないよ。トリを務めるというのも悪くない。

- ふーん、まあ兄上がいいならいいけど。じゃあ教経で遊んでようっと。

- やめろ迷惑だ。

- アピールか……私の目的は源氏再興。それ以外に力を割いてはこなかったからな、特に言う程の才は――。

- 何をおっしゃるのです! 武の強さはもとより、軍を率いる統率力も並外れておられます。

- そうだな。多くの人を惹き付けるなんて誰だって出来るものではありません。

- なにより、源氏再興にかけるひたむきさが頼朝殿の一番の魅力ではないでしょうか。

- 弁慶、春玄……。

- 己でアピールできないとは憐れだね。いや、そういった気質が好ましい者もいるのかな。

- あー、いるねそういう物好きな奴。影背負ってる感じがいいってことでしょ?

- 頼朝の場合、人生ハードモードなのが可哀想になってつい構っちゃうとか?。

- ああ、不憫枠という奴だね

- !?

- 知盛、重衡! おぬしら何を言うのだ!

- そうだそうだ! たしかに不憫枠は需要があるが本人には黙っておくのが優しさってもんだ!

- 私は……不憫なのか……。

- 気をしっかり持って、頼朝様! 俺はいつだって味方だよ!

- そこは否定するところだ、高綱……。

- はあ……収拾がつかなくなってきたのでさっさと知盛にいきましょうか。

- おや、私が話していいのかい?

- まあ、今までの話を聞いて言えることは私と物語を紡ぐのが最良だろうということだね。

- お前からは危険な匂いしかしないんだが。

- そうかな? 最初は多少緊張感もあった方が何事も盛り上がると思うよ? その点、私は一番適任だ。

- それに恋愛のいろはもわかっている。私のルートに来れば、深く愛され幸せな道が歩めると保証しておこう。

- きー! なんだよ、その余裕!

- いいね、兄上! さすがだよ。

- 俺は鳥肌が止まらないんだが……。

- さて、それで義経はどこだい? 今の話を聞けば私が一番だとわかっただろう。

- だああっ、駄目だ駄目だ! ここからはゲーム本編で楽しんでもらいます!

- ああ、ここで義経様が合流でもしたらそれこそ戦になりかねない。

- 本当に心惹かれたのなら義経様もちゃんとその相手を選ばれるはず。強硬な手段はやめてもらおう。

- ……なるほど。では此度の勝負の結果はゲーム本編に預けておこうか。

- あれ? 兄上いいの?

- 楽しみは取っておくのも手だろう? それに、せっかくなら万全な準備をして迎え入れてあげようと思ってね。

- おい、それに俺を巻き込むなよ。

- 教経もいた方が面白いのに。

- そう言って振り回す気だろう。付き合っていられるか。

- とまあ、一応最後まで順番は回ったか? はあ……なんだかドッと疲れた……。

- でも、たくさん話が出来てよかったんじゃない? 俺は楽しかったよ。

- 貴重な体験ではあったな。

- うむ。これを見ている皆にも我らのことがわかってもらえただろう。

- 企画はこれで終わりか? ならば私は戻らせてもらうぞ。

- というわけで『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』皆、存分に遊んでくれよな!

- 公式推奨攻略順はプレゼンの順番通り『教経→弁慶→春玄→頼朝様→知盛』だよ!

- ちなみに私たち兄弟と高綱、そして重衡の四人も義経様と深く関わるルートがあるのでそちらも是非やってみてくださいね。






