- 武蔵坊弁慶
- 「殿もいかがです?」
- 遮那王
- 「え……っ!?」
- 遮那王
- (なんだ? 一体どういう意味で……)
- 武蔵坊弁慶
- 「さあ、どうぞ! こちらへ」
- 遮那王
- (まさか……私を抱き上げようというのか!?)
- 遮那王
- 「い、いやいい。私は大丈夫だ」
- 武蔵坊弁慶
- 「なあに、遠慮なさらず。御免!」
- 遮那王
- 「うわあっ!?」
- 遮那王
- 「べ、弁慶!? 何をする!」
- 武蔵坊弁慶
- 「子供らだけを抱え上げたのでは不公平でございますゆえ。
ここは殿にもお楽しみ頂かなければと思った次第」 - 武蔵坊弁慶
- 「この弁慶の肩から見る景色はいかがでごさいましょう?」
- 遮那王
- 「た、確かに高い! 驚くほど辺りがよく見える。だが、このようなこと……っ」
- 女の子
- 「すごーい! 大きいおじさんはホントに力持ちなのね!」
- 男の子
- 「俺たちより大きい兄ちゃんでも、簡単に担げるんだ!」
- 遮那王
- 「~~っ。も、もう良いだろう?そろそろ下ろしてくれ。私を担ぎ上げるなど、重いだろうに」
- 武蔵坊弁慶
- 「重くなどありませぬ。まるで羽衣のごとき軽さですとも。
このまま山を駆けることすら出来ますぞ」 - 武蔵坊弁慶
- 「拙者の頑丈さは、殿が一番よくおわかりでしょう」
弁慶は満面の笑みを浮かべると、私に向かって腕を広げる。
突然のことに呆気にとられ彼の顔と腕をまじまじと見つめる。
戸惑う私の方へと弁慶はずいと体を近づけてきた。
弁慶は軽々私を抱え上げると、肩に乗せてしまった。
突然のことに、声がひっくり返りそうだ。
驚くやら気恥ずかしいやら……慌てる私をよそに、子供たちが歓声を上げる。
私と弁慶の周りを駆け回り、はしゃぐ二人になんと言えば良いのかわからない。