- 源 義経
- 「!」
- 源 頼朝
- 「ここにいたか」
- 源 義経
- 「兄上!」
- 源 頼朝
- 「昨日の報告をまだ聞いておらぬ」
- 源 義経
- 「失礼いたしました。こちらの巡回が終わりましたら改めて兄上のもとへ参上いたします」
- 源 頼朝
- 「私はこれから出かける」
- 源 義経
- 「それでは戻られましたら――」
- 源 頼朝
- 「お前もついて参れ」
- 源 義経
- 「え……っ!」
- 源 義経
- 「あ、兄上!?」
- 源 頼朝
- 「暴れるな。落ちるぞ」
- 武蔵坊弁慶
- 「殿!」
- 春玄
- 「一体、どちらへ!?」
- 源 頼朝
- 「お前達は邸に戻っていろ」
- 源 義経
- 「兄上!」
- 源 義経
- 「あの、どちらへ行かれるのでしょうか?」
- 源 頼朝
- 「…………」
- 源 義経
- (答えて下さらない)
- 源 義経
- (兄上が話さない限りこちらから話しかけるわけにもいかないし)
- 源 義経
- (一体どうしたら……)
- 源 義経
- (だが不思議と落ち着く。戦を終えて、再び生きて会えたからだろうか)
- 源 義経
- (兄上が無事でよかった……)
馬のいななきに面を上げると、そこには馬から降りた兄上がいた。
兄上は私を瞬時に抱えると、そのまま馬へと跨った。
そう言うや、兄上は馬を走らせた。
逞しい左腕が腰に回り、横抱きにされた私の身体をしっかり抱きしめる。
話すことも動くことも出来ずただ身体を兄上の胸に預ける。
武装しているにも関わらず兄上の熱が皮膚に伝わってくるような気がしてなんだか気恥ずかしくなった。
そう思うと、肌に感じる兄上の体温が心から嬉しく思えた。