MENU

  • TOP
  • WORLD
  • CHARACTER
  • GALLERY
  • SYSTEM
  • SOUND
  • SPECIAL

»差分表示


しばらくの間、その場は沈黙に支配された。
柳さんの視線が、フェンスの外へと向けられる。
そこに広がるのは――新宿の街。


柳 愛時

「……ここから見える、新宿の街が好きなんだ」

小さく聞こえた声には、強い意志が宿っているように感じられた。

柳 愛時

「今は、変わり果ててしまってるけどな。少し前までは賑やかで、人が多かった」

柳 愛時

「それこそ軽犯罪なら山ほど起こってた。

どうしようもない街だけどな、それでも人が普通の日常を送れるここが好きだったんだ」

柳 愛時

「……俺は、人間にとっていちばん大事なのは【当たり前の日常】だと思ってる」

そして──その目にも、強い意志を感じた。


柳 愛時

「食べたいものを食べて、仕事をして、家族や友人と過ごして、

1日が終われば安心して眠りにつける――そんな、日常」

柳 愛時

「それが壊れるのだけは、許せないんだ。……だから、取り戻したい」

強い、願い。
それはきっと、柳さんの嘘偽りない気持ちだ。


星野市香

「……ありがとうございます。こみ入ったことを聞いてしまってすみません」

柳 愛時

「なに謝ってるんだ」

小さく、柳さんが笑う。
そうすると、ぴんと張りつめていた空気がふっとゆるむようだ。


星野市香

(……私、緊張してたのかな)

柳 愛時

「急に、こんな得体の知れない奴らに協力しろなんて言われたんだ」

柳 愛時

「誰だって、詮索くらいしたくなるだろう。自分の身を守るためにも、な」

星野市香

「……柳さんは、得体の知れない人じゃない……と、思います」

なんて言っていいかわからず、視線をさまよわせながら、つい口にする。


星野市香

(でも……本当にそう、思ったし)

柳 愛時

「……いや、それはさすがにどうなんだ。警戒心が緩すぎるだろ」

星野市香

「そうですか……?」

柳 愛時

「少しは自覚しておけ。……星野、俺も聞いていいか?」

星野市香

「なんでしょうか?」

柳 愛時

「お前の、今の目的は?」

星野市香

「今、の……」
LINEで送る Twitter


©2016 IDEA FACTORY/DESIGN FACTORY