8月3日、奥音里。夏祭りの花火は、恋と死の予感。

8月8日に奥音中学校で開催されるエイトのライブの準備は着々と進んでいるようだった。
生徒会長のユキは実行委員も兼ねており、毎日、風厘館と学校の行き来で忙しそうだ。
しかし、一向にエイトが町に現れた様子はない。
一方、消えた兄の消息を求め、ヒノと一緒に町を散策するイチコ。
目抜き通りの人たちから兄の目撃談を集めようとしたが、不思議なことに、1年前の失踪事件のことを誰もはっきりと覚えていなかった。

目抜き通りで、噂の町非公認キャラクター「奥音パンダ」を発見する。
感激してツーショットを収めるヒノ。陽気に手を振って別れる。
しかし町の住民から、奥音パンダに関する不穏な噂を耳にする。

・作者不明
・着ぐるみの中が誰なのか、誰も知らない
・真夜中に目撃されることもある


今や、奥音パンダの存在は、「奥音里七不思議」のひとつとして数えられているという。

夕方になり、結局、収穫なく風厘館へと戻るふたり。
町の方から祭囃子が聞こえて来る。
奥音神社を中心に、すでに夜店が立ち並んでいるらしい。

ユアがイチコのために夏祭りの浴衣を用意してくれた。
素敵な柄に喜ぶイチコ。着付けをしながらユアが尋ねる。
「ねえ、イチコ。誰と夏祭りに行くことにしたの?」

待ち合わせは午後6時。

イチコは誘われたひとりの青年の元へと駆けつける。
青年も、浴衣を着てイチコを待っていた。
金魚すくい、射的、たこ焼き、あんず飴に綿あめ。
夜店めぐりのデートを堪能するふたり。

8時になると、いよいよメインイベントの花火が打ち上げられる。

夜空を彩る、色鮮やかな大輪。轟く爆音。
手を繋いで見上げるふたりは、思わず言葉を失う。

そして──。
町中の人が夜空を見上げているその時、「それ」による2人目の犠牲者が生まれようとしていた──。