大正25年。
大震災から著しい復興を遂げ、和と洋が混ざった独特な文化で発展し続けている帝都トウキョウ。
近代化が進み、印刷された本が増え始める中で、不可解な事件が立て続けに起こる。

【手書きの和綴じ本を、読んだ者が自殺をする】

はるか昔から、“言葉には霊力が宿り、文字には魂が宿る”とされ、
読んだ者に影響を与える本の存在は確認されていた。
だが殆どのものは恐怖の対象となり、焼却されるなどして残っているものは少ない。
近年の研究の結果、それは書いた者の“情念や記憶”が残ったものとされ、
保護や研究が進められるようになった。

【稀モノ】の影響には大きな個人差がある。
特に感受性が強い者や書いた者の血縁者、関わりの深い者はまるで自分に起きたことのように同調してしまうことがあり、
それを切っ掛けとした事件が相次いで発生することとなった。
政府は帝都内に自筆の和綴じ本の取り扱い注意令を出すなどして、対策を講じている。