ザビーネさんの剣を受け止めたのは、
長い髪をなびかせたひとりの男性。

ザビーネ
「奇跡、ですか。
そんな言葉で片づけられるほど、
軽い一撃ではなかったつもりですが」

警戒心も露わに睨むザビーネさんに対し、
現れた男性は手で背後に合図を送る。

???
「……さあ、今のうちに行きなさい。
脱走と命令違反の件については後程
問い質しましょう」
???
「……し、しかし……」
???
「無駄に命を散らすことは許しません。
我らの命は偉大なる人民の皇帝のために
あるのですから」
???
「……承知致しました」

彼の言葉を聞いた吸血鬼の男は、
そのまま闇の中へ走り去っていく。

それを静かに見やったザビーネさんは、
目の前に残った男性を睨み付けた。

ザビーネ
「ずいぶんと部下思いなのですね。
フランス軍の軍人は」
サラ(主人公)
「え……フランス……?」
???
「ほう。何故我々がフランス軍だと?」
ザビーネ
「何故も何も。皇帝は複数いても、
【人民の皇帝】などと呼ばれるのは
フランス皇帝ナポレオンただひとり」
ザビーネ
「何よりその軍服を見れば一目瞭然です。
その恰好で誤魔化しきれるとでも?」
???
「さすがに言い訳は利きませんか。
変装でもしてくるべきでしたかね」

ザビーネさんが言う通り彼は、
派手な制服を身にまとっていた。

私はフランス軍の軍服なんて、
見たこともなかったけど……。

言われてみれば確かに制服というか、
軍服らしき意匠がそこかしこに見える。

ザビーネ
「……さて。先程の男の上官らしい
あなたに代わりに問いましょう」
ザビーネ
「先程の男は最近このヴィリニュスで
起きている奇妙な事件と密接な繋がりが
あると見ましたが、いかがですか?」

ザビーネさんに目配せされて、
私もハッと口を開く。

サラ(主人公)
「そ、そうです。私は見ました」
サラ(主人公)
「あの人が口元から血を滴らせて……。
足下に血を流した女性が倒れていたのを」
サラ(主人公)
「まるで、その、吸血鬼みたいに……」
???
「……吸血鬼?
ふふ、何を言うのですお嬢さん」

私の言葉を耳にした男性は、
一拍置いてから小さく笑い出す。

???
「そんな御伽噺みたいな存在が、
現実にいるはずがないでしょう?」