何が、という余裕もなかった。

サラ(主人公)
「!」

気づけば包み込まれるように、
私の背中は壁に押し当てられ――。

てらてらと輝く吸血鬼の牙が、
ゆっくりと私の肌に迫っていた。

アレクサンドル
「……嫌だったら、言ってくれ……」
サラ(主人公)
「――――」

何か答えようと開いた口から、
ひゅっとかすれた音だけが漏れる。

抵抗しないと。断らないと。

そんな私の思考とは裏腹に、
脳の辺りが痺れたように動かない。

アレクサンドル
「……いいんだな?」

違います、と言いたいのに。

アレクさんの紅い瞳を見ていると、
どんな抵抗の言葉も喉に溶け消える。

体も言葉も自由を奪われた私の肌に、
彼はそっと口づけるように――。