何が、という余裕もなかった。
気づけば包み込まれるように、
私の背中は壁に押し当てられ――。
てらてらと輝く吸血鬼の牙が、
ゆっくりと私の肌に迫っていた。
何か答えようと開いた口から、
ひゅっとかすれた音だけが漏れる。
抵抗しないと。断らないと。
そんな私の思考とは裏腹に、
脳の辺りが痺れたように動かない。
違います、と言いたいのに。
アレクさんの紅い瞳を見ていると、
どんな抵抗の言葉も喉に溶け消える。
体も言葉も自由を奪われた私の肌に、
彼はそっと口づけるように――。