幻灯火:皆、よく集まってくれた。
満を持して、これより会議を始めたい。

胡土前:呼ばれたから来たけど……
会議ってなんの会議だよ?

秋房   :幻灯火の呼び出しって時点で、
いい予感はしませんよね……。

空疎尊:まったく……我を呼びつけたのだ。
くだらない理由だったときは、わかっているだろうな?

古嗣   :空疎は相変わらず気が短いねえ。
ま、事情を知りたいという点では僕も同じだけど。

幻灯火:うむ……実はな――。

秋房   :俺も今日ばかりは空疎に賛成だ。
修行を切り上げてまで来たんだからな!

幻灯火:……ん?   いたのか、秋房。

秋房   :いたよ!?
相変わらず、失礼だなお前は!

幻灯火:まあ、それはいいとして――
とにかく、皆話を聞いてもらえるだろうか。
まず……今この瞬間も、そこにある【まいく】、
そして接続された【いんたあねっと】を通じて、
我々の様子は全世界に向けて一斉配信されている。

秋房   :ぜ、全世界一斉配信!?

古嗣   :しかし作品の発売記念だっていうのに、
『マイク』とか『インターネット』とか、
時代を考慮しない発言が多いね?

胡土前:まあ、ゲーム本編じゃねえしな。
メタ発言もありってことなんだろ。

空疎尊:……それで?
大層な用意をしたようだが、
肝心の【会議】とはなんのことだ。

幻灯火:決まっている。
来月発売される【白華の檻 〜緋色の欠片4〜】の宣伝会議だ。
そのような大切なことを忘れてしまうようでは、先が思いやられるな……
皆、これを気に考えを改めるといい。

空疎尊:……ん?

胡土前:あれ?

秋房   :来月?

古嗣   :あー……ちょっと待ってくれないか、幻灯火。

幻灯火:どうした?
来月に迫った【白華の檻 〜緋色の欠片4】の
宣伝会議が気に入らないとでもいうつもりか……!?

胡土前:い、いや……憤慨するのはいいけどよ。
お前とんでもねえミスしてるぞ。

幻灯火:なに……?
来るべき発売日に向け、
戦略を練ろうという私の発想の何がおかしいというのだ。

秋房   :【白華の檻 〜緋色の欠片4〜】が発売されるのは来月じゃない!
今日だ!!   本日発売だ!!   今さら宣伝会議してどうするんだよ!?

幻灯火:な、なんだと……!?

胡土前:お前は時々びっくりするほど天然だなぁ。

空疎尊:ふん、阿保狐の勘違いということか。
では解散しても構わぬな?
我は忙しいのだ。

古嗣   :そうだね。じゃあ、ここは解散ということで――。

幻灯火:いや……!!
まだ、まだ諦めてはいけない……!!
絶望するにはまだ早いぞ、皆……!!

胡土前:……いや、絶望してるのはお前だけだぞ。

幻灯火:このような窮地がなんだというのだ。
我々はこのような苦境、幾度となく潜り抜けてきたはずだ!
そう――暗闇の中にこそ、光明はある……!!

古嗣   :生憎と、暗闇の中にいるのは君だけなんだけど……。

幻灯火:覚めない悪夢など……ないはずだ!!

秋房   :悪夢を見てるのはお前だけだけどな。

空疎尊:いっそ永遠の眠りについたらどうだ?

幻灯火:よし、では気を取り直して――
発売1ヵ月前から始まる
【わたしのかんがえた   さいきょうの   せんでんけいかく】に
目を通してもらおうか。

秋房   :お前の中では俺たちも落胆してることになってるのか。
事実を捻じ曲げまくってるな……。

古嗣   :ついでに言わせてもらうと、
計画名からして期待できない感じだね。

胡土前:なんつーか、
小学生の自由帳に書いてありそうなタイトルだな……。

空疎尊:字が下手なのがより一層それを助長しているな。

幻灯火:では秋房、この計画書を5部ずつコピーしてきてくれ。

秋房   :こ、この辞書みたいに分厚い書類をか!?
なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだよ!

幻灯火:この行為の正否には……玉依姫の命がかかっている。
そしてこれは、お前にしかできないことなんだ。(迫真)

秋房   :姫様の命のため……!?
そして俺にしか、できないだと……!?
よ、よし、わかった!   その役、この隠岐秋房が引き受けた!!
(秋房、走り去る)

胡土前:……相変わらず扱いやすいヤツだ……。

古嗣   :素直すぎて人生損するタイプだよね、彼……。

秋房   :うぉおおおおおお!!

空疎尊:もう戻って来たのか?
玉依姫がらみとなると、相変わらず常識の通じないヤツだ。

秋房   :こ、コピって来たぞ……!!   これでいいんだな!?

幻灯火:ああ、よくやった。
これで玉依姫の命も救われるだろう。

胡土前:いつ姫さんの命が危機にさらされたんだよ。

古嗣   :そしてこの計画書で、どうしてお姫様の命が救われるんだろうね。

秋房   :か、考えてみればその通りだ!
幻灯火、お前、俺を欺したな!

空疎尊:考えずともその程度を気づかぬ貴様の頭に、
我はこの上ない同情を覚えるぞ?

秋房   :う、うるさいぞ、空疎!!

幻灯火:まあ、落ち着け。
与太話はこれを読んでからにしてもらおう。
この【わたしのかんがえた   さいきょうの   せんでんけいかく】を!!

古嗣   :はぁ……
しょうがない、幻灯火がそこまで言うんだ。
皆、とりあえず読んでみようじゃないか。
なになに……   【発売一ヵ月前――   日取りの設定】……?

胡土前:えっと――え?
発売日決まってるのに、発売日を決めようとしてたってことか?
……もう、ワケわかんねーな。

秋房   :猛烈に読むのを止めたくなってきた……。

幻灯火:ま、待て……!
まだ発売日を変更するという手が残っている!!

古嗣   :あの、幻灯火、何を本気で検討しているんだい。無理だよ?
もう発売されてるんだから。

空疎尊:次……洋風にするか和風にするかを決める。
なんの話だ?

胡土前:和風の宣伝か、洋風の宣伝かってことじゃねえか?

秋房   :胡土前殿、ますます意味がわかりません。

胡土前:気にすんな。
言ってる俺自身も意味わかんねえし。

秋房   :次、パーティーの会場を決める――?
発売記念パーティーをするのか!
豪勢な計画してるな、お前……!

空疎尊:……宣伝効果に結びつくかと言われると微妙だな……。

古嗣   :ま、まあ、いちいちツッコんでたらキリがない。
とりあえず、先に進めるよ。
その次は――関係各者にハガキを出す……。
発売の告知ハガキかな?

空疎尊:そちらは比較的妥当と言えるか。
関係各者にではなく販売店などに、
発売するということを知らしめるのは悪いことではない。
といっても、既に発売してしまっているから後の祭りだが……。

幻灯火:だが、そこからは怒涛の展開だ。
私自身、よく出来たと自負している。

秋房   :パーティーへの出席確認……。

空疎尊:会場の飾り付け……。

胡土前:司会の手配……。

古嗣   :引出物選び……。
ちょっと待って、これは……!!

胡土前:婚約指輪を玉依姫と買いに行く――って、おいおい!!
幻灯火、こりゃ一体なんだよ!?

幻灯火:私と玉依姫の結婚式の段取りだが?

秋房   :い、いやいやいや!?
なんでそうなった!   どこでそうなった!?
宣伝計画でもなんでもなくなってるじゃないか!!

空疎尊:ふん……婚約者たる我を差し置いて、何を世迷い言を。
まずはこの計画書にある【新郎   幻灯火】【新婦   玉依姫】の
幻灯火の部分を【空疎尊】に直してもらおうか。

秋房   :あ、ずるい!   それなら秋房だっていいだろう!!

胡土前:お前ら、ツッコむところがずれてるぞ……。

古嗣   :全くだね。
1ヵ月前からの準備で間に合うわけないじゃないか!
結婚式を甘くみないでもらおうか、幻灯火!!

胡土前:違う……!
すっごい力説してるけど、
お前も怒る場所が間違ってるぞ、古嗣……!!

幻灯火:とりあえず――
式は教会と神社、どちらで挙げるべきだろうか。

古嗣   :うーん……お姫様はやっぱり立場上、神社の方が……
って違うよ。そもそもなんで結婚が宣伝になると思ったんだい。

幻灯火:よくぞ聞いてくれた……!!

胡土前:おお……!?
いきなり食いついたな幻灯火……!

幻灯火:まず、大々的な結婚式を開く。

空疎尊:ほう?

幻灯火:皆に祝福してもらう。

胡土前:なるほどなるほど。

幻灯火:皆、感動。

古嗣   :ふむ、それで?

幻灯火:その場で白華の檻を販売。
式に参加した者、そして中継している【てれびじょん】を見た者が、
私と姫の結婚を祝して、感動の涙を流しながら、
御祝儀代わりに【白華の檻 〜緋色の欠片4〜】を買っていく。
結果、皆が幸せになる。

秋房   :なるほど!   それなら確かに皆幸せだ……!
きっとこのゲームの魅力も、たくさんの人に伝わるなあ……!
ってなるかぁあ!!

幻灯火:どうした、秋房。
反抗期か?

秋房   :違うわ! というか、お前ばっかり目立って
他の攻略対象は完璧にカヤの外じゃないか!

幻灯火:……私以外にも攻略対象がいたのか!?

秋房   :なんだその素でびっくりしたって顔は!   当たり前だろ!
俺だって一応攻略対象なんだぞ!
っていうか俺だって姫様と式挙げたいんだよ、ちくしょー!

古嗣   :式もいいけど、僕はその夜の方が楽しみだなあ。

空疎尊:ほう……今、人の婚約者をつかまえてなんと言った?

古嗣   :おっと怖い怖い、冗談だよ。
空疎。

胡土前:そんなことより……
この状況、世界に向けて配信してんだろ?
どうすんだよ、このとっちらかりよう。
どうにかしてまとめねえと終われねえぞ。

幻灯火:そうだぞ、皆。
全く……情けないことだ。
一度原点に立ち返るべきだろう。

古嗣   :うん、君が言えることじゃないよね?

幻灯火:まずは私と玉依姫の式を
教会で挙げるか、神社で挙げるかについてだが……。

秋房   :原点そこかよ!!
もうお前の結婚式妄想はどうでもいいよ!

胡土前:しかたねえなあ。
じゃあ、俺が買いたくなるようなネタバレしてやるよ。
(マイクに向かって)ここだけの話な、このゲーム……
攻略対象は俺だけなんだ。個別ルート、全部俺ルート。

秋房   :便乗して大ウソ言わないでください!   胡土前殿!!

胡土前:姫さん方、俺の魅力に酔いしれな。
いい夢――みさせてやるぜ?

秋房   :いい声で何言ってるんですか!

空疎尊:……名案を思いついた。
この場で我以外の全員を殺せば、
この騒がしい連中がいなくなる上、
必然的に我のルートだけになるではないか。

秋房   :ま、待て空疎!
既にゲームは発売されてるんだから、
そんなの無理に決まってるだろうが!!

幻灯火:……面白い。
白華の檻の『めいんひいろお』が誰か、
はっきりとさせようではないか。

秋房   :お、おい幻灯火。
俺の話を聞いてたか?
め……目が怖いぞ……!!

胡土前:勝っても負けても恨みっこなし。
ふっ、大蛇の血がうずくぜ!

秋房   :うずくなぁあああ!!

   

(死闘開始)

古嗣   :さて、後ろでは死闘が始まっているけれど、
ゲームではきちんと、皆攻略できるか安心してね。
【白華の檻 〜緋色の欠片4〜】は、来月じゃなくて本日発売。

君との夜を、楽しみにしているよ。
では、ゲーム本編で会おうね。
お・ひ・め・さ・ま♪