ダンテ
「……行かないでくれ」
驚きに目を丸くする私を背後からしっかりと抱き留めたまま、ダンテは耳元に囁く。
ダンテ
「……まだ、……邪魔されたくない」
リリアーナ
「――――」
その声音は乞うような響きがあって、すごくドキドキしてしまう。
驚きはしたけど、抵抗したいとは思えなくて、大人しく捕まったまま。
数秒か、数十秒か……。
ニコラ
「いないのかな……」
やがて、怪訝そうなニコラの声が聞こえたかと思うと――
ドアの前から遠ざかる足音が聞こえた。