オランピア
(……ここにまた立つことが出来て良かった)
常穂
「時貞、オランピア」
オランピア
「常穂様、本日は……」
常穂
「よいよい、今日はそのような堅苦しい挨拶は
なしにしよう」
常穂
「時貞は私の息子同然。
ということは貴女様も娘のようなもの」
常穂
「どうかこれからは、【緑】をもう一つの故郷と
思って下され」
オランピア
「有難うございます。
大好きな【緑】が故郷なんて幸せです」
常穂
「……嬉しいことを」
常穂
「いかん、泣いている場合ではない。
【緑】の地にても、この二人を夫婦にしなければな」
常穂
「では二人とも、ここに向かい合って立つのだ」
オランピア
「……はい」
天草四郎時貞
「お願いいたします」
オランピア
(一体……どんな感じになるのかしら?
向かい合って……天沼矛とはまた違うのよね?)

時貞からは『糸』を使った儀式なのだと
説明は受けていた。

それでもこうして立つと、
伊舎那天と似た緊張が走る。

常穂
「二人とも、手を」
笹良
「私がいっちばーん! お二人とも、
次は赤ちゃんですよ!」

顔を出した笹良が、私の手首に糸を巻きつける。

竹駒
「おめでとうございます、お幸せに」

今度は竹駒が、時貞の手首に糸を結ぶ。

オランピア
(楽しい……!)
【緑】の少女
「おめでとうございます!
時貞様もオランピア様もすごく素敵です!」
オランピア
「どうも有難う」
千歳
「おめでとうございます、どうかお幸せに」

そんなふうに、【緑】のみんなが糸を持ち寄って
私達に巻いてくれる。

私達の手首はどんどん色とりどりの糸で彩られ──

常穂
「では最後に私から」

常穂様が赤い糸で、私と時貞の手首を結び、
そっとお酒をかける。

常穂
「糸が[]り合わさり、重なり合うように、
お二人が途切れず仲睦まじく暮らせますよう」

常穂様のそんなお言葉に、歓喜が押し寄せる。

嬉しくて、嬉しくて、この場でまた時貞に
抱きつきたいほどだった。