──岬の隠れ家に泊まった彼が、
家の横の手入れをする。
それはいつもの幸せな光景だった。
あの日、慈眼様から賜った桃の種は大きく育ち、
二人ではとても食べきれないくらいの実をつけている。
埋められた種に、月黄泉が生き水を撒いた。
あっという間に育つ様子が楽しく、
私もせっせと水を撒いているうちに──
こんなにも大きくなった。
彼が小さく島の方を見やった。
こっそり、時貞の様子を窺う。
許婚となっても、
彼は未だ天女島に渡ったことがない。