天草四郎時貞
「今日もよく実ってるなぁ」
オランピア
「改めて考えると、
ここに種を埋めて正解だったと思うわ」

──岬の隠れ家に泊まった彼が、
家の横の手入れをする。

それはいつもの幸せな光景だった。

天草四郎時貞
「人目につくところだったら大騒ぎだよね。
二年半でここまで育つなんて」

あの日、慈眼様から賜った桃の種は大きく育ち、
二人ではとても食べきれないくらいの実をつけている。

天草四郎時貞
「しかも一年を通してずっと花が咲いたり、
実をつけたり……流石は生き水」
オランピア
「私もまさかここまで育つとは思ってなかった。
天女島から水を汲んできた甲斐があったわ」

埋められた種に、月黄泉が生き水を撒いた。

あっという間に育つ様子が楽しく、
私もせっせと水を撒いているうちに──
こんなにも大きくなった。

天草四郎時貞
「……天女島か」

彼が小さく島の方を見やった。

オランピア
(もしかして……婚儀の話を持ち出すなら、今?)

こっそり、時貞の様子を窺う。

許婚となっても、
彼は未だ天女島に渡ったことがない。