珠藍大姉
「これは【青】に代々伝わる三献[さんこん]の儀と
呼ばれるものです」
珠藍大姉
「天沼矛の式は卑流呼様へのご挨拶と誓い、
これは【青】の民へのお披露目という感じね」
珠藍大姉
「三つの盃にはそれぞれの意味があるの」
珠藍大姉
「一番小さな盃はあなた達の過去を、
二つ目の盃はあなた達の現在を」
珠藍大姉
「そして三つ目の盃は二人の、
【青】の繁栄と安泰を祈るものです」
珠藍大姉
「オランピア、璃空をよろしくお願いね」
オランピア
「……はい、こちらこそよろしくお願いいたします」
璃空
「【青】の民よ、本日は我等の婚儀に
このような宴を催してくれたこと、心より感謝する」
璃空
「……私のことで、皆にも多くの不安を抱かせた」
璃空
「珠藍殿は偉大な方、私などまだまだ足下にも及ばぬ」
璃空
「だが改めて伝えておきたい」
璃空
「私は、珠藍殿達が、先を生きた者達が培い、
築き上げたものを蹂躙しようとは考えていない」
璃空
「だが島の状況も刻々と変わり、
考えるべきことが多くある」
璃空
「どうか、共に島を佳きものにしていこう」

集う者達が、深く頭を下げる。
その表情には、確かな敬意と祝福が滲んでいた。

珠藍大姉
「では二人とも、盃を」

静寂しかなかった。

御神酒を注ぐ微かな音と、
私と璃空の衣擦れの音だけ。

オランピア
(……【青】の皆さん、どうぞよろしくお願いします)

そんな気持ちを込めて、私は盃を干した。