ヒムカ
「……僕を愛してくれて有難う」
オランピア
「……!」

ふわりと、優しい腕が私を包み込んだ。

ヒムカ
「今頃、[そら]の上で別天津神達が驚いているかも。
最も醜く、『不出来』であった僕が……
人の娘と結ばれるなんて」
ヒムカ
「本当はね、僕も今……少し信じられない。
僕が……──ここに立つなんて」
オランピア
「……ヒムカ」

私は頬擦りするように彼を抱きしめ返す。

ヒムカ
「母上達を真似たのは、僕なりに人の子を
祝福するつもりだったんだ」
ヒムカ
「もちろん……心の中で苦しかったけど、
尊い儀式だと思ったから」
オランピア
「ええ、素敵ね」
ヒムカ
「貴女が僕を愛してくれたから、迎えに来てくれたから
僕は今、ここに立ってる」

彼を喪いかけた時のことが思い出され、
堪える間もなく涙が溢れた。

ヒムカ
「どうしたの? おかしなことを言ったかな」
オランピア
「……戻って来てくれて有難う」
ヒムカ
「……オランピア」
オランピア
「何度でも言うわ、
貴方が消えないでくれて良かった」
オランピア
「今日で……今度こそ、貴方は私の花婿になる」
オランピア
「貴方と一緒にここへ立てて良かった」

優しい彼のことだから、遠い昔のことを
多く語りはしないだろう。

でもいいのだ。
私がこれからもずっとずっと、彼を愛すから。

私が誰よりも、彼を愛すから。