広場は静まり返っていた。

布越しにも、私の一挙手一投足に
注目が集まっているのを感じる。

オランピア
(朱砂は一体どんな格好なのか、楽しみ)

ゆっくりと、ゆっくりと、
日時計に向かって歩いていく。

オランピア
(……そろそろかしら)

段差を感じ、小さく足を踏み出す。

道摩大師
「連れて来たぞ、朱砂」
朱砂
「有難うございます」
オランピア
(……!)

いつもの朱砂の声のはずなのに、
別人に聞こえるくらい私は緊張していた。

慈眼大師
「では夫となる者よ、
妻となる者の布を外すがよい」
朱砂
「はい」

朱砂の指が肩にかかる気配がする。

オランピア
(何処かで飾りが取れたりしてないわよね?
大丈夫よね?)
【赤】の民
「おめでとうございます!」
【赤】の民
「おめでとうございます、朱砂様、オランピア様!」
オランピア
「……!」

視界が開けた瞬間、目の前には愛しい人の笑顔。

そして舞い散る花びら、みんなの歓声。

朱砂
「そのドレス、よく似合っています」
オランピア
「嬉しいわ、こういった形の服を着るのは
初めてだったから」

私達はこっそり言葉を交わす。

朱砂
「布を被った貴女の姿を見て、
最初にコトワリへお連れした日のことを
思い出していました」
オランピア
「……!」
オランピア
「ふふっ」

花びらを受けながら、私は密かに笑いを堪える。

朱砂
「何かおかしなことでも?」
オランピア
「『責任を取って私が相手を務めます』」
朱砂
「……なるほど」