芦屋 総佑
「……なぜ、手をつなぐんだ?」
渕田 結茉
「だって、こうでもしないと急いでくれないでしょ?」
総佑の手をぎゅっと握って、商店街を歩いていく。
芦屋 総佑
「だからって、人前で……」
渕田 結茉
「人、いないから」
芦屋 総佑
「そういうことを言っているんじゃなくて……」
渕田 結茉
「今までだって手をつないで歩いてもらっているし、今更、気にしなくていいでしょ」
総佑は私に引っ張られながら、ため息を吐いた。
芦屋 総佑
「……いつの話をしている? 手をつないだのは、まだお前が小さかったからだ。
ちょろちょろして目を離すとすぐにいなくなって……」
渕田 結茉
「そんなに私、ちょろちょろしてた?」
芦屋 総佑
「……していた。手を離すと、すぐ迷子になっていただろう。忘れたのか?」
渕田 結茉
「うーん……忘れたような、覚えているような」
芦屋 総佑
「どっちだよ……
とにかく、もう二十歳なんだから、大人の女性としての自覚を持て」