ルヲ
「おーい!」
その時、遠くから呼ぶ声がして、顔を上げると、ルヲが馬に乗って駆けてくるのが見えた。
ナーヤ
「ルヲ……?」
私の目の前までやってきて、ルヲが馬を止める。
そして座り込んだままの私を見て、痛ましそうに顔をしかめた。
ルヲ
「こりゃ随分な格好になってるじゃないか。一体何があったんだい?」
ナーヤ
「ルヲこそ、どうして、ここに……」
ルヲ
「どうしたも、こうもないさ。丁度、この近くの村に商売で来てたんだ。一体、何があったんだい?」
ナーヤ
「それが――」
説明しようと口を開いたけれど、うまく言葉が出なかった。
声が掠れて、唇が震える。
ルヲ
「――……」
ルヲが黙って馬を下りて、私の前にしゃがみ込む。
そして、そっと私の肩に手を置いた。
いたわるようなその仕草に、喉の奥が塞がったようになる。
余計に、うまく喋れなくなった。
ナーヤ
「ごめんなさい……、――」
話そうと思えば思う程に、うまく言葉が出なくなるようだった。
慌てる私に、ルヲはただ静かに微笑んだ。
ルヲ
「お嬢さん。無理に喋らなくていいんだ」
ぽんぽん、と彼が私の肩を優しく叩く。
琥珀に似た瞳の中に気遣う色が浮かんでいるのを見た瞬間、目頭が熱くなった。
でも、泣いている場合じゃない。
懸命に呼吸を整えると、私は、口を開いた。
ナーヤ
「それが……」