―『金烏玉兎典』より

???(玉彗)「……人、か……。
このような場に流れ着くとは珍しい」
ナーヤ「う……」
???(玉彗)「まだ、息があるか」
ぐん、と身体を引き上げられる。
あたたかな手の感触に虚ろだった意識が、鮮明になった。
ナーヤ(……生きて、る……?)
冷え切った身体は重たく、感覚も曖昧だ。
けれど私を抱えてくれる“誰か”の体温は鮮明で、自分の息があると気づく。

生きている。

ほっとした途端、身体の感覚が舞い戻ってきた。
身体が酷く痛み、寒さに震えが止まらなくなる。
ナーヤ「っ……」
???(玉彗)「……酷い怪我だな。
急ぎ醫院いいんに戻り火を熾す必要があるか。
生薑しょうきょうはまだあったと思うが……」
ナーヤ(この人は、誰……?)
朦朧としながら、顔を上げる。
その瞬間、彼が息を呑むのが分かった。
???(玉彗)「なっ―!?
貴嬢は……まさか―」
まさか、と言って彼が私を凝視する。

愕然と、何かを恐れるような
苦悶と悲痛さが顔によぎる。
その瞳に痛みを堪える色が浮かんだ。
???(玉彗)「……いや。今は……問いただすべきではない……」
ぐ、っと感情を堪えるように目を瞑り、彼が、私から目をそらす。
小さなため息をついて、彼は私を抱きかかえたまま歩いていった。

夜明けの日差しが、枝葉の隙間から零れ落ちている。

草を踏む優しい音が、静寂の中に響いていた。

―『金烏玉兎典』より

玉彗「やめなさい」
押し殺した声が、背後から聞こえた。
後ろから羽交い締めにされ、身動きが取れなくなる。
玉彗「所詮、過去の影だ。呼びかけても意味はない」
ただ黙って見ていろというのか。
われない罪を被せられ、苦しみうめく人の姿を。

意味がないと分かっていても、黙って冷静に見ていられる程、非情にはなれない。
だって苦しんでいるのは―玉彗さんだ。
ナーヤ「嫌、です!
……苦しむ玉彗さんを、黙って見ているなんて、出来ません……っ」
玉彗「っ……」
ナーヤ「意味がないとしても……黙って、見ているだなんて嫌なんです」
玉彗―それでも、諦めなさい」
声は、微かに震えていた。
玉彗さんが項垂うなだれ、私をぐっと後ろから抱きしめる。
動くな、耐えろというように。
玉彗「貴嬢が、どれだけ叫ぼうと……誰にも……声は届かない」
声をかけ、過去に干渉したいと願うのはきっと彼も同じだった。

でも出来ないから―無意味だからと彼は心の叫びを封じて私の動きを奪い去る。

何も出来ない事がもどかしくて、視界が滲んだ。
やめてと叫んだとしても、この声は誰にも届かない。

糾弾され苦しむ玉彗さんがいるのに、彼の心に寄り添う事さえ出来ないんだ。
仙虹時代の
玉彗
―私には、すべき事が、ある……。
誰、が……使ったのか、調べなければ、ならぬ……」
瞑芯山の
仙虹1
「何度言えば分かる。
お前以外の誰が使うと言うのだ。
責任逃れをしようとしても無駄だ」
瞑芯山の
仙虹2
「犯人は明白だ」
仙虹時代の
玉彗
「っ、ならばせめて、この瞑芯山が、元に戻るまでは―」
瞑芯山の
仙虹1
「誰がお前を信用出来る」
瞑芯山の
仙虹2
「お前は、凶事を引き起こした張本人だ。
―大人しく裁かれよ」

―『天命胤外伝』より

筆記用具と本を片付けて、朝餉を取るために広間へ向かおうとする。
その時、ひょこっと燕粋お兄ちゃんが覗き込んできた。
玖 燕粋「おお、ちょうど終わった所だったか。
ふむ感心感心」
フェイ「燕粋兄ちゃん!」
ナーヤ「お兄ちゃん!」
燕粋お兄ちゃんが迎えに来てくれたのが嬉しくてパタパタと走り寄ると、燕粋お兄ちゃんは、えへんと胸を張った。
玖 燕粋「おうおう、可愛い弟と妹よ。
この燕粋が迎えにきたぞ」
玖 燕粋「ふふん、どうだ。燕來。
私が、燕粋お兄ちゃんだぞ!」
私たちがくっつくと、燕粋お兄ちゃんはいつも、こうして得意げな顔をした。
代わりに燕來さんが、呆れた表情を浮かべる。
玖 燕來「……兄上。それの何が凄いんですか」
玖 燕粋「年長者は敬えと、教わらなかったか?」
玖 燕來「私も、敬えるような兄が欲しいと子どもの頃はよく思っていましたよ」
玖 燕粋「この子らは、私を敬ってくれるが?」
玖 燕來「この二人は聡く辛抱強い子ですからね。
兄上の突拍子もない発言が許せるほど、心が広いんでしょう」
玖 燕粋「燕來は心が狭いからなあ」
玖 燕來「兄上に、大切に残しておいた肉包ロウパオを食べられたり、勉強の邪魔ばかりされていたら心も狭くなります!!」
玖 燕粋「ははあ懐かしいな。
燕來が何もかも私よりも出来るもので、つい妬んでしまったのだ」
全く悪びれない様子の燕粋お兄ちゃんに、燕來さんが、がくりと項垂れる。
でもその様子は、以前よりも苛立っては見えない。

―こんな風に燕來さんと燕粋お兄ちゃんが言い合うようになったのも、ここ最近のことだ。
玖 燕來「……兄上ももっと、我が家の仕事をなさってくれれば良いのですが」
玖 燕粋「しているではないか。
妓楼通いも辞めたし、ほれ、この通り立派に子育てをしているぞ」
玖 燕來「子育てというのは甘やかし遊ぶという意味ではないのですが」
玖 燕粋「良いではないか。
燕來が厳しく教え導き、私が甘やかす。
それでちょうど釣り合いが取れるというものだ」
玖 燕來「それは、まあ……そういうものかも、しれませんが」
珍しく燕粋お兄ちゃんの言う事を認めた燕來さんに、私もフェイも燕粋お兄ちゃんもみんなで目を丸くする。

そして―燕粋お兄ちゃんは、本当に、本当に嬉しそうに笑った。
玖 燕粋「お前のことは信頼しているからな。
よくよく、この二人を導いてやれ。
二人も、燕來の言う事をよく聞くのだぞ」
フェイ
&ナーヤ
「はい! 燕粋お兄ちゃん!」
玖 燕來「…………」
玖 燕來「……私の事は」
フェイ「え?」
玖 燕來「…………私のことは、兄と、呼ばないのか」
ぽそっと呟かれた言葉に、私もフェイも、息を吸い込んだ。
フェイ「呼んでいいのか!?」
ナーヤ「呼んでいいんですか!?」
玖 燕來「お前たちは、玖家の養子となった。
兄上の事を兄と呼びながら、 私の事は他人行儀に名で呼ぶのはおかしいだろう」
玖 燕來「年長者への敬いさえ忘れなければ、敬語も不要。―兄と、呼んで良い」
フェイ「っ……!
ありがとう、燕來兄ちゃん!」
ナーヤ「ありがとうございます、燕來お兄ちゃん!」
玖 燕來「っ……で、では朝餉に向かうぞ!」
玖 燕粋「うむ、そうだな。食べるとしよう。
先ほど厨房に寄って、燕來の好きな杏仁羹キョウニンカンを作るよう言っておいた。楽しみにしておれ!」

―『三世因果典』より

フェイ「よっと」
寝床に入ると、フェイは私を抱きしめた。
急に抱きしめられて、私は驚いてしまう。
ナーヤ「わっ、フェイ……?」
フェイ「はー、あったかい。
今日はちょっと寒かっただろ?
だからこうしたくてさ。いいか?」
いいか、なんて言いながらもフェイの眼差しは、私を気遣うものだった。

私を安心させるように、フェイが抱きしめてくれている。
彼の優しさを感じて、胸がいっぱいになった。
ナーヤ「うん。……あったかいね」
フェイ「うん。……あったかいな」
ぎゅうっとくっついて、私たちは見つめ合う。
毎夜、私たちはこうして触れ合って眠りを待っていた。

夜は、暗闇に落ちてしまうから。
不吉な記憶に包まれないように、私たちはこうして抱き合っている。

フェイは、しばらくじっとそうしていて、私の髪を指先で梳いていった。
フェイ「なあ」
優しい声で私を呼んで、彼が、私の顔を間近で見つめる。
その瞳が優しくて、なんだか照れくさかった。
ナーヤ「フェイ、どうしたの?」
フェイ「ううん。……幸せだなあって思ってさ」
フェイ「俺、お前と結婚出来て、すごく……幸せなんだ」
顔が近づいて、ちょん、と唇が触れた。

―『三世因果典』より

ナーヤ「船に乗っている時に嵐が来たら、どうするの?」
ルヲ「そうだなあ。そん時は、無事に到着できるよう祈るしかないな」
ルヲ「あとは、船室に逃げるか
つっても船室も酷く揺れるし浸水の恐れがある。
とにかく嵐には遭遇しないのが一番だよ」
ルヲ「あとはそうだな。
放り出されないように柱に身体を縛り付けておくとか―」
その時、大きな波がきてぐらりと船が揺れた。
ルヲ「おっと!?」
ナーヤ「わっ!?」
ふらついて、船の壁に背を打ち付けてしまう。
同時によろめいたルヲが、私に覆いかぶさってきた。
ルヲ―っ!?」
鼻と鼻がくっつきかけて、私もルヲも同時に目を丸くする。
けれどルヲはすぐに余裕ありげに笑った。
ルヲ「っとと。危なかったねお嬢さん。大丈夫かい?」
ナーヤ「ええ、私は平気だけれど……。
ルヲも腕は大丈夫?
さっき、すごい音がしたでしょう?」
ルヲ「オレは平気さ。
お嬢さんの顔を、こんなに近くで見られているからね。
腕の痛みぐらい、どうってことはないさ」
ぱちりと片目を閉じて、彼が笑う。
なんだか懐かしいとさえ思える、彼のいつもの仕草だ。
ナーヤ「ふふっ、相変わらずね、ルヲは」
ルヲ「ええ? 相変わらずかい?
この色男の顔を、この至近距離で見ても、いつも通りだって言うのかい?」
ナーヤ「だって、ルヲはルヲでしょう?」
ルヲ「オレはオレ、か……」
くすっと苦笑を浮かべて、ルヲは私の顔を、ずいと覗き込んだ。
目を細めて、彼が色っぽく微笑みかける。
ルヲ「オレから見たら、今の君は愛らしくて、とびきり可憐な白蓮華びゃくれんげのように見えるよ。
思わず―摘んでしまいたくなる」
ルヲ「愛らしいお嬢さん。
これでも、オレはオレかい?」
ナーヤ「……? ええ、ルヲはルヲだと思うけれど……」
こんな顔をするルヲを、よく覚えていた。
マツリカ村で、私たちに冗談を言う時、ルヲはいつも、こうして笑っていたから。

懐かしくて微笑みかけると、ルヲは一瞬息を飲んで、それから、更に顔を近づけた。
ルヲ「いけないよ、お嬢さん。そんなに可愛い顔をしていると。
奪いたくなってしまうからね」
ルヲ「いっそ、ここで分からせてあげようか?」
ナーヤ「……分からせる?」
ルヲ「ああ。こうやって―」

―『三世因果典』より

胡 青凛「……っ、なんて、素敵な思いつきでしょう……。
やりたいです。……やってみたいです!
私と、貴女だけの宴を―」
胡 青凛「一緒に、踊りましょう。
……二人きりでも、きっと、楽しいでしょうから」
そしてその夜、月が天頂に昇った頃―。

宮廷中の人たちが寝静まった後の静寂な庭にて、私たちは誰もいない池の前で、ひっそりと向き合っていた。

部屋にあった布を纏い、即席で対舞の衣装のように見立ててみる。
胡 青凛「さ、私の手を取って」
私の前に、白い手が差し出される。

月の光が地面を照らす中で、私たちは、手を取り合った。
ナーヤ「こう……ですか?」
胡 青凛「ええ、そうです。お上手ですね」
胡 青凛「手を取ったら、次はこうです」
彼が、私の手を引いて、くるりと回る。
軽やかなその動きはとても優雅で、私は、思わず見とれそうになった。
ナーヤ(すごく綺麗……)
ずっと踊りたかったと言っていた通りに、彼は、とても舞が上手だった。

静かに回り、近づき、すれ違い、ふと目を合わせる。
胡 青凛「ふふっ、お上手ですね」
ナーヤ「青凛も。すごく、お上手です」
胡 青凛「本当ですか?」
ナーヤ「はい。……とても」
胡 青凛「ふふっ、良かった。
いつか……誰かと舞う時の為に、練習をしていた甲斐がありましたね」
青凛さんは、静かに私を見つめた。
慈しむような優しさの中に、どことなく寂しさが宿っている。

たった一人で、対舞の練習をしていた時、彼は、どんな事を思っていたんだろう。

いつか出会う伴侶を思って
舞うその日を、楽しみしていたのかもしれない。

なら、彼が思う存分楽しめるよう、私も舞いたかった。

扇や袖を使い、滑らかに舞う青凛さんに導かれ、私も、前へ横へと足を滑らせ静かに舞を続けていく。

私が一歩前へと出れば、彼は、自然とその動きを受け止めてくれた。

初めてなのに、ぴたりと呼吸を合わせて。
私たちは、袖をゆるやかに振りながら舞い続ける。
胡 青凛「……楽しいですね……」
ぽつりと、彼は囁いた。
視線を交わして、私たちは微笑み合う。

裾を翻して、また一歩進んだ。
指先だけで触れ合って、私たちは身を寄せ合う。

地面に落ちる私たちの影は寄り添い合い、舞うたびに月明かりが揺れていた。
さらさらと、帯につけた佩玉が音を立てる。
静かな夜の庭にあるのは、私たち二人の立てる音と、風の音だけだ。
胡 青凛「本当は……ずっと、寂しかったんです。
一緒に舞う人もいなくて。
誰も、私と舞おうとしてくれなくて……」
胡 青凛「でも、今は貴女がいてくれるんですね。
私は一人じゃない……」

―『三世因果典』より

ナーヤ「はい、みんな。乳茶《ツァージャ》を作ってきたの。
温まるから、良かったら飲んでね」
フーリー「わあ……っ、花嫁さんありがとう!」
持ってきた頑丈な敷布を地面に敷いて、作ってきた料理や飲み物を並べていく。

作ってきたのは、カフセや乳茶《ツァージャ》だ。
マオ「わあ……! 美味しそう!」
リンヤン「花嫁さん、これ、食べていい?」
ナーヤ「ええ、もちろん。
みんなの分もあるから、一つずつね」
リンヤン「はあーい!」
子どもたちが我先にとカフセに手を伸ばす。
作ったカフセを嬉しそうに頬張る子どもたちの姿に、ふわっと嬉しい気持ちが湧いてきた。

それからみんなに順番に乳茶《ツァージャ》を注いでいると、ゼベネラ王が私の隣に座った。
ゼベネラ「…………」
ナーヤ「ゼベネラ王も、乳茶《ツァージャ》をお飲みになりませんか?」
ゼベネラ「……いただこう」
乳茶《ツァージャ》を受け取って、ゼベネラ王が、ぐいと飲み干す。
それから、私のことをじっと見た。
ゼベネラ「…………」
ナーヤ「? どうかされましたか?」
ゼベネラ「いや。……そう、気遣いばかりしなくて良い。
……空を見てみろ」
どうやら、私が子どもたちに料理やお茶を出してばかりいて空を見られていないことを、気にかけてくれたようだった。
ナーヤ「ありがとうございます」
乳茶《ツァージャ》を入れた瓶を置いて、私は空を見上げる。
そこに広がる星空に、私は思わず息を呑んだ。
ナーヤ「わあ……!」
ゼベネラ「…………。
ここは、白狼族のみが知る、星見の場所だ」
マオ 「そうそう、秘密の場所なんだよ!
雪山でいっちばん、星空が綺麗に見える場所なんだ!」
ナーヤ「すごい……綺麗な星空……」
リンヤン 「あははっ、花嫁さん、びっくりした?」
ナーヤ「ええ。マツリカ村では、こんな星空、見たこと無かったもの……」
マツリカ村では、夜通し蛍を灯す蛍光塔があった。
蛍たちの灯りが私たちの夜を優しく包み込み、だからか、星空は遠いものだったのだ。

けれど、灯りを殆ど持たずに見上げる星空は荘厳で、私はただただ星を見ることに夢中になる。
ナーヤ「綺麗……」
ゼベネラ「……あそこにある星が、我らの群れを初めに守った尊い狼がなった星だと言われている」
隣に座るゼベネラ王が、ぽつり、と呟いた。
白狼族に伝わる、星の伝承を教えてくれるらしい。
ナーヤ「狼が、星になったのですか?」
ゼベネラ「そうだ。白狼族に伝わる話では、人は皆母なる山に還り、狼たちは星となり我らを照らす」
ゼベネラ「そして、星となった狼たちはネラの日には祖先の魂を導く光となる……そう言われている」
ゼベネラ「星空を流れる星は、かつて我らを守った狼らが我が祖先をつれて渡っている姿だそうだ」
訥々と話すゼベネラ王の低い声は心地よく、彼の言葉に耳を傾けながら、私は空を見上げた。

空を見ていると、一筋の流れ星が夜空をよぎった。
―あれが、星となった狼たちがご先祖様を運んでいる姿なんだ。

なら、お父さんも今、あの星空から、私たちを見守ってくれているんだろうか。
ゼベネラ「……郡王も、きっと見守っているだろう」
私の想いに気づいたのか、ゼベネラ王は、そう言ってくれた。
彼の細やかな心遣いに、微かに胸が痛くなる。
ナーヤ「なら……、父に、伝えないといけませんね。
今、私が幸せだということを……」

―『三世因果典』より

ナーヤ「……燕來さん? いらっしゃいますか?」
いくら呼んでも返事がなかった。
なので、思い切って戸を開けて湯殿の中を確認する。

もしかして、もう上がっていて見張りの人も見逃したのかもしれないと思いつつ湯殿を見て―。

顔が真っ赤になりながら考え込んでいる燕來さんを見つけて、私は大いに慌てふためいた。
ナーヤ「燕來さん!!」
玖 燕來「……は……?」
顔を上げて、燕來さんが驚いてざばっと立ち上がる。
その瞬間、彼はよろめいた。
玖 燕來「っ、なんだ……? 急に、視界が―」
ナーヤ「きゃっ!?」
倒れそうになった燕來さんを慌てて抱きとめる。

けれどその重さに耐えきれず私は一緒に転んでしまう。
それでも燕來さんは、ぐったりしたままだった。
ナーヤ「燕來さん、しっかりしてください! 燕來さん!!」
玖 燕來「うう……」
倒れた燕來さんをなんとか寝かせて、硬い地面に触れないよう頭を膝の上に乗せると、私は、懸命に扇を扇いでいた。

燕來さんは、すっかりのぼせているのか顔は赤く、呼吸が浅い。
目を瞑っている顔は、ひどく悩ましげだった。
玖 燕來「なんだ……目が、回る……」
ぐったりとしている燕來さんに水を飲ませ、火照りが落ち着くようにと扇ぎ続ける。
ナーヤ「燕來さん、しっかりしてください。私が分かりますか?」
玖 燕來「う……うぅん……」
うんうんとうなされながら、燕來さんがぐったりと目を瞑っている。

けれど扇ぎ続けていると、しばらくして、ようやく燕來さんが目を開けた。
玖 燕來「う……ここ、は……?」
ぼうっと目を開けて、彼が、周囲を見回す。
そこでようやく、湯殿にいると気づいたようだった。
玖 燕來「……小雀しょうじゃく? どうして、ここに……」
ナーヤ「なかなか燕來さんが戻って来られないもので、心配して様子を見に来たんです。
そうしたら、のぼせていらっしゃったから……」
玖 燕來「のぼせた? ……私が……?」
意外そうに目を瞬かせて、それから、燕來さんは納得したような顔をしてふうっと息を吐いた。
玖 燕來「ああ……、そうか。……考え事をして……長湯、しすぎたのか……」
玖 燕來「すまない。……心配かけたな。お前が来てくれて、助かった。
危うく溺れるところだった、か―。ッ!?」
頭がはっきりしてきたのか、彼が周囲を見回す。
そこで、彼は突然飛び起きた。
玖 燕來「っ、見っ……、!?」
けれど、まだ目眩がしたのかくらくらと倒れてしまう。
そんな彼を慌てて受け止めて、私はまた扇ぎ始めた。

―『三世因果典』より

もどかしそうな顔だった。
だから私から、彼を抱きしめようとしたのに、カルマは首を横に振って、私の後ろに回った。
カルマ「……カルマ、から……が、いい……」
カルマは、爪や角で私を傷つけないように慎重に、私の身体を後ろから抱きしめた。

彼の腕の中に、すっぽりと身体が収まって、夜の肌寒さが遠ざかった。
ナーヤ(あったかい……)
カルマの傍にいると温かくて、泣きたいほど、ほっとした。

包まれるように抱きしめられて初めて、カルマと離れていた間、本当は心細かったんだと今更に気づく。

きっと、カルマはそんな私の気持ちに気づいていたから、自分から抱きしめたいって思ってくれたんだ。
ナーヤ「……あったかいね」
カルマ「ン……っ。……いた、く……ない?」
ナーヤ「ええ。痛くないわ」
カルマは一生懸命話してくれる。
言葉はたどたどしくても、彼の気持ちはいっぱい、いっぱい伝わってきた。

カルマに会えたことが、奇跡のように感じられる。
―彼がいなければ私は、きっと今頃生きていられなかった。

彼がいなければ、私の心は、きっと無事じゃなかったはずだ。
ナーヤ「……カルマ」
カルマ「ン……?」
ナーヤ「私を、見つけてくれてありがとう」
―あの日、私が牢屋に閉じ込められた時に壁を削ってカルマは来てくれた。
だから私は今、生きて彼と一緒にいる。
カルマ「い、っしょ……、だから……」
ナーヤ「……うん……。一緒ね」
カルマ「ンッ……いっしょ」

―『三世因果典』より

ルヲ「さ。昨日から大変なこと続きだったんだ。もう寝よう」
ナーヤ「ええ。……そうね」
ふあ、とあくびを堪えながら彼女が頷いて、やがて、腕の中から穏やかな寝息が聞こえてくる。
ナーヤ「すぅ……すぅ……」
ルヲ「…………」
眠る彼女の穏やかな寝顔から、オレは、目が離せなくなった。

オレの腕の中に、オレがどれだけ望んでも得られなかったはずの平穏がある。
ルヲ「ナーヤ――」
気がつけば、オレは顔を近づけていた。
ルヲ「ん……」
ただ、触れるだけの口づけだった。

けれど彼女の唇に唇を重ねた途端、オレの中にあった恐怖も疲れも、全てが吹き飛んでしまう。

ずっと――ずっと、望んでいた。
愛する人がいて、何にも脅かされない日々を。

望んでも手に入らないと思っていた。
あいつが生きている限りは。

たとえ異国の牢獄にいると知っていても、あいつが生きている限り、オレは悪夢にうなされ続けていた。

でも、今は違う。
オレはこの手で――禍根を断ち切ったんだ。

ずっと止まらなかった震えが、ようやく収まる気がした。
ルヲ(君は、すごいな……)
オレの傍にいてくれて、オレに勇気をくれる。
こんなに小さく可憐な少女が、途方もない力を持っていた。
ルヲ(君が、好きだよ。
……どんなことをしたって構わないって思うぐらいに……)
きっと彼女が勇気をくれたから、オレは、こんなにも大胆な作戦をやってのけられたんだろう。

もしも、彼女を信じられなかったら。
もしも、自分が自分を信じられなかったら。
もっと手っ取り早い方法をとっていたかもしれない。

こんな風に憂いを全てこの手で終わらせることが出来なかったかもしれなかった。
ルヲ(君に出会った。……君が、いてくれたからオレの未来は変わったんだ)
ルヲ「ありがとう。オレの傍にいてくれて――」
囁いて、オレはもう一度唇を重ねる。
それだけで鼓動が早鐘を打ち、オレは、生きている実感を覚える。

同時にどうしようもなく、喉が渇いた。
――恋しい人が目の前にいて、どうして、平静でいられるだろう?
ルヲ(まずったな……)
別の意味で、今晩は眠れそうになかった。
でもそれはさっきよりも、ずっといい意味だ。

悶々としながら、オレは彼女の唇を盗んでいく。
ルヲ(必ず、君に求婚するよ。
……君がオレの気持ちに応えてくれるまで、絶対に、手を出したりしないから)

―『三世因果典』より

ナーヤ「これ……!」
五つぐらいの幼い娘が、石を並べ指さして遊んでいた。
月下ノ国でもよく見るような光景に、ほっと胸を撫で下ろす。

よくよく見て、俺はそれがただの石でないと気づく。
あれはきっと――蛍聲の鱗だ。
玖 燕來(ということは、まさか――この娘が、宝玉鑑定士なのか?)
――炯眼を宿した娘が鉱石の中から宝玉の原石を見つけ、選び、火貿易の対価とする。
書物で学び、知ったことだ。

気になって近づいていくと、娘の眼に文様が浮かんでいるのが分かった。
彼女が指差し選ぶたびに、ふわりと風が舞う。

不思議と彼女は恐ろしく見えなかった。
気になってもう少し炯眼を見ようと近づいたその時、彼女は、ぱっと顔を上げた。
ナーヤ「お兄さんが、公許火商さま?」
玖 燕來「え」
驚いて逃げようとしたけれど、娘に手を握られる方が先だった。
ナーヤ「はじめまして!
ほうぎょく、かんていしのナーヤです!」
ナーヤと名乗った幼い娘は、俺の指をぎゅうっと握って、嬉しそうに鑑定中の石を指さした。
ナーヤ「見てください、かんてい、できたんです!」
玖 燕來「あ、ああ……」
頷きつつ、内心冷や汗をかいていた。
幼い子供に指を握られたのは初めてだったからだ。

自分よりも十は年下のような娘が、人懐こく笑っている。
それだけでも慣れないのに彼女は、俺の指を握っているのだ。

振り払おうかとも思ったけれど、何だかそれは出来なかった。

驚く俺の指をぐいぐいと引っ張って、その娘が屈託なく笑う。
ナーヤ「今日のかぼうえきは、ラタおばさんがやるからって言われて、できなかったの。
でもね、次はやっていいって言われたのよ!」
ナーヤ「わたしもちゃんとできるの、安心してね、おばさんが教えてくれたもの」
玖 燕來「何故、私に話す」
ナーヤ「お兄さんが、次のかぼうえきには、来てくださるんでしょう?」
きらきらと目を輝かせる幼い無垢な視線に俺は、ついに居心地が悪くなって、ぱっと手を振り払ってしまった。
玖 燕來「――私が来るのは、遊びではない。
公許火商として重要な役目があるからだ」
ナーヤ「ふふっ。わたしもよ。
わたしがやらないと、村が困ってしまうもの」
ナーヤ「お兄さん、どうぞ次の火貿易では、よろしくお願いいたします!」

―『三世因果典』より

胡 青凛「実は、王族専用の大浴場があるのです。
以前からそこに貴女をお招きしたいと思っていて……」
胡 青凛「だから、一緒に入りましょう?
――大丈夫、怖い場所ではありませんから」
と、いうように青凛に押し切られて私と彼は今、一緒に浴場へとやってきた。
けれど――。
ナーヤ「青凛……っ」
突然、後ろから彼に抱きしめられてしまって、私は全く身動きが取れなくなっていた。

王族専用の浴室と呼ばれる場所はとても広くて、そして立ち上る湯気で遠くまで見通すことが出来なかった。

どこに湯があるのかと探していたら、突然、彼に抱きしめられたのだ。
そのまま引き寄せられ、動きを奪われる。
胡 青凛「この浴場では、蒸気を浴びて身体を温めるのですよ。
だから……ここで、じっとしていてください」
耳元で囁いて、彼が私のうなじに唇を落とす。
ぞくりと背筋に震えが走って、私は、思わず目の前にあった龍の彫刻に縋り付いた。
ナーヤ「っ……、身体を、温めるなら……こんな風に、しなくても――」
胡 青凛「どうしてですか?
……私たちは、夫婦なのでしょう?」
胡 青凛「愛らしい貴女を見ていたら、我慢が出来なくなってしまったのです。
だから……ね? 貴女を、私に下さい」
ナーヤ「青凛、駄目です……」
胡 青凛「何が駄目なのですか?」
ナーヤ「だって、こんな所じゃ……、誰かが、来るかも――」
胡 青凛「ここは、王族専用の浴室です。
……だから誰も来ませんよ」
胡 青凛「万が一知られても、叱る人はいません。
私は……第一公子なのですから」
世継ぎをと、彼の父親は朝議で言ったはずだった。
だから平気だと、彼が手を滑らせる。
胡 青凛「さ、今日はたくさん儀礼の練習をして疲れたでしょう?
私が、洗って差し上げますね」
ナーヤ「平気です、私一人で――」
胡 青凛「いけませんよ。
……私にさせてください」
胡 青凛「貴女の疲れを、私が癒やしたいんです。
ほら……私の手に、全てを委ねて」
笑いを含んだ声で囁かれると、もう駄目だった。
身体を洗うという口実で触れられて、私は、懸命に龍の彫刻にしがみつく。
胡 青凛「ふふっ。愛らしい人ですね。
そんなに恥ずかしいのですか?」
いつになく意地悪で、いつになく艷やかな声だった。

婚姻ノ儀を行った晩が初めてだったのに、すっかり彼は、私の弱点に詳しくなっていて、だから、私はもう逃げられない。
胡 青凛「どうしましょう。……貴女を知れば知るほど、夢中になってしまうみたいです。
これが、結婚をするということなのですね」
胡 青凛「ごめんなさいね、でも……。
貴女が、欲しくなってしまうんです」

―『三世因果典』より

ゼベネラ「……我がつがいよ。ん……」
今日の口づけは、とびきり優しかった。
ちゅ、と音を立てて口づけをされて、唇が離れたと思うと、もう一度重なる。
ゼベネラ「……は……、んっ……、はぁ……」
ナーヤ「ん……っ」
くすぐったくて、思わず身を捩る。
けれどお預けは出来ないというように、彼が追いかけてきた。

かぷり、と唇を甘く噛まれる。
まるでじゃれ付く狼同士のように、私たちは口づけを交わし合っていた。

唇を舌先でなぞられ、もう一度唇が重なる。
小さく音が鳴って、小鳥が啄むような口づけをされた。
ゼベネラ「ん……っ……」
ナーヤ「ふふっ。……くすぐったいわ」
ゼベネラ「……っ……」
私が思わず彼の胸板を押し返すと、彼は、お預けをされた狼みたいな顔をした。
ゼベネラ「……すまぬ。この口づけ、というのはしているとどうにも、夢中になる……」
ゼベネラ「お前と、もっとしていたい。……良いか」
彼の掠れた声に、私は――。
ナーヤ「は、い……」
すると手のひらで頬を撫でられて、もう一度彼の顔が近づいた。
ゼベネラ「……っ、ん……」
ナーヤ「んんっ……」
ナーヤ(いつもと、違う――)
いつもの夜と違うのは、彼が、口づけ以上のことをしないところだった。

ただ口づけだけを繰り返し、甘えるみたいに手を握る。

私が、口づけをしたいと告げたあの夜から、ゼベネラは時折、こうして口づけに夢中になる時があった。今晩が、その時らしい。

こうなるとゼベネラは、満足いくまでずっと、ずっと口づけをしている。
狼がお気に入りの骨をずっと齧っているみたいに。
ゼベネラ「我がつがいよ……ん……」
ナーヤ「……っ」
息まで奪われて、くらくらと目眩がする。
ゼベネラは、口づけというもの自体、私がしたいと言った時に初めて知ったはずだった。

それなのに、いつの間にかこんなにも彼は私を口づけだけで翻弄する。

さっきよりも口づけが深くなって、私は、息を求めて懸命に口を開いた。
すると彼との口づけが、一層深くなる。
ナーヤ「んっ、……」
息が苦しくて、涙で視界が滲んできた。
頬が熱くて、鼓動が速くなってしまう。
ゼベネラ「……はぁ……っ、……我が、つがいよ――」
次第に、彼の瞳が熱を帯びてきた。
切実に口づけをしながら、彼が、私を強く抱きしめる。
ナーヤ「ゼベ、ネラ……」
ゼベネラ「っ……、つがいよ……」
息も絶え絶えに彼の名を呼べば、彼が、喉を鳴らす。
切なげに、彼が私を見つめた。

視線が絡み合い、私たちはどちらからともなく手を伸ばしあった。

指と指を絡ませて、もう一度口づけをする。
さっきまでみたいに一方的じゃなくて。
私からも、ゼベネラを求めて。
ゼベネラ「……っ……は――」
口づけをしながら、私たちは互いの衣に手を伸ばしあった。
毎夜と同じように。

けれど、その先に進んでしまうのが何故かもったいない、と思ってしまった。

口づけに夢中になっている今が、幸せだからかもしれない。
だから私は手を止めて、ただ彼の衣を握るだけになる。
ゼベネラ「――っ!」
ゼベネラは、その意図に気づいたようだった。
彼もまた、私の衣にかけていた手を止めて、私の背に指先を滑らせる。

抱き寄せ、ただ肌を触れさせて、また、唇を重ね合わせた。
ゼベネラ「ナーヤ……」
ゼベネラ「っ……」
ナーヤ「ゼベネラ……」
ゼベネラ「……我が、つがいよ……」
口づけをしながら互いを呼び合って、私たちは、一緒に笑いあった。
ナーヤ「ふふっ」
ゼベネラ「ははっ」
笑う吐息が唇に触れて、幸せな気持ちでいっぱいになる。
ゼベネラ「……口づけとは、不思議なものだな……。
言葉よりも……私の気持ちを、伝えてくれるような気がする」
ゼベネラ「お前が、嫁いですぐの頃から、知っていれば……、お前を、もっと安心させられただろうか」
口づけを親愛の証しとして、もっとしていれば良かったと彼が言う。

嫁いだ時から、ゼベネラはずっと私のことを気遣ってくれていた。
それなのにもっと気遣いたかったと思ってくれている。

私の気持ちを気にしてくれてばかりいる彼が愛しくて、私は、ぎゅっと彼に抱きついた。

―『三世因果典』より

ナーヤ「……っ……!」
急に脚に触れられて、私は驚いた。
香油を付けた彼の手が私の肌の上を滑り、甘ったるい匂いに包まれる。
カルマ「髪に塗るのもいいって言ってたけれど、本当は、こうやって、脚とかにつけるものなんだって」
ナーヤ「そう、なの……?」
カルマ「こうやって、香油を塗りながら揉みほぐすと、疲れが取れるんだって」
そう言って、カルマが私のふくらはぎをぐっと指で押してくれる。
すると確かに疲れが和らぐ気がした。
ナーヤ(気持ちいい……)
カルマ「……いい匂いだね」
彼が手を動かすたびに、香油の甘い香りが漂った。

足の指先に香油を塗りながら、彼が私の膝の頭に、ちょんと唇を触れさせる。
カルマ「……っ……」
ナーヤ「カルマ……!?」
そんな所に口付けるなんて思わなくて驚いて声を上げると、彼は意地悪く笑った。
カルマ「可愛いお膝だな、って思ったんだ」
言いながらも、彼は香油をあちこちに塗り込んでいった。
私の手を取って、指の間にも指を滑らせる。

私に触れたのは、あの晩が初めてだったはずなのに、彼の動きは驚くほど、手慣れたものだった。

最初は、少し悪戯するぐらいの顔つきだった。
けれど、だんだんとカルマの眼差しが真剣さを帯びていく。

ただ、香油を塗っているだけなのに何故か背徳的だった。

部屋の灯りが揺れるたびに、香油を塗った肌が鈍く光っている。
カルマ「――……どう? ……気持ち、いい?」

―『三世因果典』より

ナーヤ「枝毛があったの」
フェイ「枝毛!? うわ、ほんとだ。
ははは……な、なんか恥ずかしいな」
ナーヤ「そう?」
フェイ「だって、毛先が傷んでるってことだろ?」
ナーヤ「ううん違うわ。働き者の証拠よ」
フェイ「え……。働き者の、証拠?」
ナーヤ「だって、いっぱい太陽の日が降り注ぐ中で畑仕事をした人は枝毛ができる、ってラタおばさんが言ってたもの」
フェイ「ふぅん……そ、そっか。そーなんだ」
ナーヤ「ふふっ。でも傷んじゃってるのは事実だから、髪用の茉莉花油でお手入れするわ。
じっとしていて」
フェイ「ありがと……」
フェイ「っ……や、やっぱそれ、自分でやるよ。
傷んでる髪、見られんの恥ずかしいし……」
ナーヤ「ふふっ。あと少しで終わるから。
それに、私はこのフェイの髪が好きよ」
フェイ「っ! 好き、って……。
あ、ありがと……俺も、お前の、髪が、好きだ……」
ナーヤ「ありがとう、フェイ!
じゃあ私の髪にも、茉莉花油を塗ってくれる?」
フェイ「へっ!? お、俺がぁ!?」