アルフレッド(前編)

社交シーズンになり、ローアンへやってきたアルフレッドはまず王宮へ顔を出したが、その目的は女王への謁見ではなかった。

「アルフレッド卿、こちらへいらしていたのですな。ということは、クレスウェルに連なる方々も既にローアンへ?」
「ええ、恐らくは。バーンスタインの方々も早々に到着されていると聞いていますが、卿はもうエドマンド卿にはお会いになられましたか?」

話しかけてきた男がバーンスタインの傍流に当たる貴族だと気づいて話を振ると、彼は延々とバーンスタインがいかに優れているかを語った後に、憐みの視線をアルフレッドへ向けた。

「たしかクレスウェルの傍流にあたる家のひとつが、跡取りになりそうな力の持ち主がいないと悩まれているとか。アルフレッド卿もさぞ悩ましいことでしょう」

(そういうあなたも大した力を持っていないだろうに)

いかにも妖精としての力の強さを重視するバーンスタインらしい態度だと辟易しながらも、アルフレッドは無難な受け答えで会話を終わらせた。

(多少なりとも有益な情報を拾えるかとも思ったが。上層階級は相変わらずという認識で間違いなさそうだな)

他にも数人と話したあとでそう結論付けたアルフレッドは、ある場所へ向かうため王宮を後にした。