ローズ
(……どうして私、このヒトとお酒を飲んでいるのかしら)
ライナス
「あ、あのー……?」
ローズ
「……なんですか?」
ライナス
「なんですかって……えっと、ちょっと近くない?」
指摘されてようやく彼の息が触れるくらいの距離で顔を覗き込んでいることに気づいた。
いつもの私ならすぐに身を引くところだが――
ローズ
「近くないとライナス様が見られないので。
私、あなたを観察してみたくなったんです」
ライナス
「え……」
なぜか堂々と主張してしまった。
ローズ
(……私、何を言っているのかしら。
たしかに彼のことを探ろうとは思っていたけれど、これはちょっと違うような)
そう思いながらも、一度覗き込んでしまうと目が離せなくなる。

やや丸みを帯びた目が彼の顔の中で一番目立つパーツで琥珀色の瞳はいつも楽し気に踊っている。
それでいて鋭い光が掠めることもあるから不思議だ。

よく動く口は笑っていることが多かった。
彼が歯を見せて笑うと、急に明るい陽射しの元へ放り出されたような気持ちになる。