みんなに言われたように、買い出しついでに息抜きのため本屋に立ち寄る――表向きは。

本屋の中には先客が一人だけ。
この客に会うことこそが、私の目的だった。
ジョン
「それで首尾は?」
ローズ
「いまのところ怪しまれては――いない」
ジョン
「『怪しまれてはいないが、やらかした』って間だな」
ローズ
「好きなように捉えてもらって、いいわ。
でも大きなへまはしてない。本当よ?」
先客――ジョンの隣にさり気なく立ち、お互いに本を選ぶフリをしながら、小声で言葉を交わす。

視線すら送っていないのに、ジョンがどんな表情をしているのか私には手に取るようにわかった。
ローズ
「……呆れてるでしょ」
ジョン
「違う。心配してる」
ジョンの心配性は今に始まったことじゃないけれど、彼の言葉には気遣う響きが含まれていて思わずちらりと彼のほうを見てしまう。