ローズ
(無言……? 怒っているのでは、ないの?)
廊下で見せたのと同じ勢いで怒鳴られると覚悟していたのに、なぜか彼は一言も発さず、考え込むような素振りを見せている。
ローズ
「あの……本当に申し訳ございませんでした。
もしよろしければ、紅茶を淹れましたのでお召し上がりください――」
沈黙に耐えかね、再度の謝罪を告げると踵を返す。
しかし部屋を出ようとした時、突如それは起こった。

肩に鈍い衝撃が走る。
ルーカスに掴まれたのだと気づいた頃には彼の手によって体の向きを変えられていた。
ローズ
「っ――」
ルーカス
「お前は……――」
肩を掴む手の強さと同じくらい、彼の視線からは痛いほどの意志を感じる。

伏し目がちだった目は見開かれ、こんな時だというのに、彼が意外と澄んだ目をしていることに気がつかされた。
ローズ
(……いったいなんなの)
目は雄弁に何かを語ろうとしているのに、それでも私には彼が何を言おうとしているのかはわからない。

言葉で、話してくれないことには。