8年前の出来事に関わる重要な人物なのかもしれない。
最大限の警戒心を持って、その顔を覗き込む。

でも私の目に飛び込んできたのは、警戒したのが馬鹿だったと感じるくらいに平和な寝顔だった。

太陽の光を気持ちよさそうに浴びながら、体を丸めてすやすやと寝息を立てる青年は、いっこうに起きる気配がない。
ローズ
(……毒気を抜かれる、間抜けな顔。
無防備で、日向ぼっこしてる動物みたい)
そうまるで――
ローズ
「犬に似てる」
自分の口からこぼれた言葉なのにストンと収まる。
普通なら日向ぼっこする動物なら猫を連想しそうな気がするが、なぜだろう。犬、がしっくりきた。

これも思い出したいこととは違うと考えながらも呟いた瞬間、なんの前触れもなく眠っていた青年がパチリと目を開けた。
ライナス
「……君は誰?」
ローズ
「!」
気づいた時には、伸びてきた腕に絡めとられ寝ている彼と間近で見つめ合っていた。