ローズ
「……私でよろしいのですか?
邸にはエドワード様もいらっしゃいますが」
アルフレッド
「いや、いい。
五家が集まると博覧会か事件のことばかりになる。
いい加減あいつらの顔も見飽きてきたところだ」
アルフレッド
「ルーカスのように職務を放棄する気はないが、私にもたまには息抜きが必要でな。
だから、そう……お前のような者の話が聞きたい」
ローズ
「かしこまりました。
私でお力になれるのなら……。お言葉に甘え、仕事は続けさせていただきますが、ぜひ」
全てを見抜くような切れ長の鋭い目。
貴族たちの中でこれを恐れる者も多いのだろう。
ローズ
(でも、舞踏会のときもこちらを思いやっている様子だった。
あくまで見た目の印象が怖く見えるせい、だと思うけれど)
そんな風に考えつつ、臆すること無く、アルフレッドに視線を向ける。
仇の一人かもしれないと、奥底に憎しみを秘めて。
アルフレッド
「お前はなぜバーンスタイン家に?」
ローズ
「昔ここで働かれていたミセス・ベルデに紹介していただきました」
アルフレッド
「ああ……会ったことがある。彼女の紹介か。
しかしヘンダーソンも褒める腕前だ、他の邸へ行こうとは思わなかったのか」
ローズ
「いいえ、とんでもございません。
ここで働けるなんてこれ以上ないほど光栄なお話でしたから」
アルフレッド
「バーンスタインは五家筆頭、他の貴族とは格が違うと考えれば道理か。
それでいまはどんな仕事を?」
ローズ
「掃除や裁縫、洗濯、それから料……」
料理、と言いかけて私は調理しないよう、厳命されていたことを思い出し、言葉に詰まる。