使用人?
「お前はこちらを見なかったかもしれないが、こちらはしっかりと顔を見ている」
使用人?
「あの夜、ローアンの路地裏にいただろう。
目撃者には……消えてもらう」
ローズ
「!」
ローズ
(なら、この男は翅狩りの……!?)
驚きに目を見開く私へ、男がいっきに距離をつめてくる。

しかし男の手が届く前に、黒い影が素早く私たちの間に滑り込んできた。
ジョン
「……どこの誰だか知らないが、お嬢に手を出すなら容赦はしない」
ローズ
「ジョン……」
廊下に出る直前、目が合った気がしたので恐らくついてきてくれているだろうとは思っていたのだが――

実際にこうして庇ってもらえると、ほっとして力が抜けそうになる。

そんな私に気づいたのか、ジョンは一瞬だけ私へ視線を寄越し――
ジョン
「…………」
ローズ
(『安心しろ』、か)
声は出さずに、素早く唇を動かす。
それは私でなければ読み取れないぐらいの速度での囁きで。

いつも通りと言えばいつも通りのジョンの振舞いに心から落ち着くことができた。
ジョン
「答えてもらおう。お前は誰だ?」