露木 紗世
(あれ、どこに行ったんだろう?)

軽く見回してみるものの、
彼の姿は見当たらない。

でも、部屋を出て行ったなら
さすがに声をかけてくれるはずだ。

露木 紗世
(……水の音?)

まさかと思いながら、
恐る恐る音のする方へ向かう。

山科 瑛
「あ、紗世ちゃん。
本読み終わったの?」

予想通り、山科さんは
さっき見たビニールプールの中で
びしょ濡れになっていた。

露木 紗世
「いえ、読み終わってはないんですけど……。
それよりも、いったい何してるんですか?」
山科 瑛
「何って、プールに入って休憩中」
露木 紗世
「……研究室の中で?」
山科 瑛
「大丈夫だよ。
濡れちゃいけないものは近くに無いし」
露木 紗世
「そうなんですね……?」

日頃から不思議な人だとは思っていたけれど、
さすがにこれは予想できなかった。

けれどこれが彼にとっての日常なのか、
平然とした様子でプールに浮かぶ
シマエナガのおもちゃをつついている。