露木 理都
(――駄目だ。今すぐ振り払え)

酔っぱらっておんぶしてやった時とも、
肝試しの時とも違う。

明らかに、【そういう意図】を孕んだ接触。

今すぐ離れなければいけないと
頭ではちゃんと分かっているはずのに、
どうしても身体が硬直して動かなかった。

露木 理都
(姉さんの力なんてたかが知れてる。
それなのに……!)

もたもたしているうちに、
姉さんの指が服の中に入ってきて――

露木 理都
「!? やめろっ!」

さすがにこれ以上は駄目だと思い、
振り向いて姉さんの肩を掴んだ。

露木 理都
「姉さん、落ち着け!
今のおまえは普通じゃないんだよ!」

必死に訴えるものの、姉さんは
ちゃんと聞いているのかも分からない様子で
じっとこちらを見ているだけだった。

直後、俺の首に姉さんが腕を回してくる。

露木 理都
「姉さ――っ!?」

離れようとしたのに、
ふいに後ろに体重をかけられたせいで
大きくバランスを崩してしまった。

露木 理都
「っ……!」

とっさに壁に手をついて、
なんとか身体を支える。

それでも、
姉さんの顔はもう目の前にあった。

露木 紗世
「おねがい、たすけて」

今まで聞いたことがない、
いつもより舌ったらずで媚びるような
甘ったるい声。

それが耳を伝って浸食してきて、
脳が沸騰しそうになる。

露木 理都
「そんなの駄目に決まってるだろ!」
露木 紗世
「どうして?
理都はわたしのこときらい?」
露木 理都
「そうじゃなくて……!」
露木 紗世
「じゃあなんでだめ?」
露木 理都
「それは……っ」

理由なんていくらでもある。

俺とおまえは家族だから。
ベータとオメガだから。
両親を裏切りたくないから。

そしてなにより、あとできっと
おまえが自分を責めてしまうから。

露木 理都
(だから、今すぐ
離れなきゃいけないのに……!)

こんな細い腕、簡単に振り払える。

それなのに、どうしても
そうすることができない自分に腹が立った。

露木 紗世
「すき。理都すき、だいすき」
露木 紗世
「だから、ね? おねがい」
露木 理都
「っ……!」

その言葉を聞いた瞬間、
頭を殴られたかのような衝撃に襲われた。

露木 理都
(なんで今そんなこと言うんだよ……!)

俺がずっと前から、
こいつに求めていた言葉。
何よりも欲しかった言葉。

それがこんなにもあっさり手に入って、
情けないくらいに決意が揺らぐ。

露木 理都
(……だって、
紗世がいいって言ってる)
露木 理都
(好きな相手が目の前にいて、
こんなに自分を求めてて……。
それに応えることの何が悪い?)

徐々に理性が溶けて、
身体から力が抜けていくのが分かった。

露木 理都
(……たとえ今だけでも、
紗世を俺のものにできる)
露木 理都
(押し倒して、キスして、そのまま――)