理都は逡巡していたものの、
やがて観念したように息を吐く。

そして、私に背を向けた状態で
地面に膝をついた。

露木 理都
「ん」
露木 紗世
「……?」

一瞬意味が分からず首を傾げたものの、
すぐにハッとする。

露木 紗世
「もしかしておんぶ?」
露木 理都
「それ以外何があるんだよ。
いいからほら、さっさと――」
露木 紗世
「えいっ」
露木 理都
「うわっ!?」

嬉しくなって背中に勢いよく抱き着くと、
その拍子に理都の身体がぐらつく。

けれど、倒れることなく
しっかりと受け止めてくれた。

露木 理都
「おまえなあ……。
まあいいや、立つから暴れるなよ」
露木 紗世
「はーい」

呆れた様子の理都に返事をして間もなく、
目線が高くなった。

理都は私を背中に乗せて、
静かな夜道をゆっくりと歩き出す。

見慣れた景色のはずなのに、
理都と同じ目線で見ているからか
いつもと印象が違っていた。

露木 紗世
「重くない?」
露木 理都
「重い」
露木 紗世
「えー、ひどい……」
露木 理都
「どこがひどいんだよ。
聞かれたから素直に答えただけ」
露木 紗世
「だとしても、こういう時は
『すごく軽いよ、ちゃんとご飯食べてる?』
って言わなきゃ駄目なんだよ」
露木 理都
「姉さんは毎日しっかり飯食ってるだろ」
露木 紗世
「う……確かに……」

反論のしようもなくうなだれていると、
理都が歩みを止めて私の身体を抱え直す。

露木 理都
「ずり落ちてきて歩きにくいから、
もっとちゃんと首に腕回せ」
露木 紗世
「はーい」

言われたとおり、
理都の首にぎゅっと腕を回す。

だいぶ蒸し暑いのに、
密着するのが全然嫌じゃなかった。

露木 紗世
「理都のおんぶ、ひさしぶりだね。
昔はよくしてくれたのに」
露木 理都
「……言うほど何回もしたことないだろ」
露木 紗世
「あれ、そうだっけ?」

昔の記憶をたどって言ったはずなのに、
あっさり否定されてしまった。

露木 理都
「そうだろ。ガキの頃の公園での鬼ごっこと
中学の頃の運動会前の練習で
姉さんが派手にすっころんだ時くらい」
露木 紗世
「あー、そんなことあったかも!
理都って記憶力すごいね」
露木 理都
「はあ、まじで酔っ払いの相手疲れる……」