――ゆらゆらと、
身体が揺れている感覚がする。

やがて背中に柔らかい感触がして、
ベッドに降ろされたのだと
ぼんやり理解することが出来た。

日下部 恭也
「ん……」

唇が重なって、呼吸が混ざり合う。
漏れる自分の声が耳の奥で響く。

その度に思考が溶けていって、
羞恥も不安も曖昧になっていくのが分かった。

露木 紗世
「恭也さ、もっと……」
日下部 恭也
「ふふ、必死で可愛い。
でも焦らなくて大丈夫だよ」
日下部 恭也
「――紗世ちゃんが求めるものは、
全部あげる」
日下部 恭也
「…………」

また口をふさがれて、
まるで恋人同士の行為みたいに指を絡める。

露木 紗世
「っ……!」

その手は徐々に下に降りていって、
反射的につま先に力が入る。

おかしいくらいに熱い私の身体とは反対に、
恭也さんの指先は少し冷たい。

けれど、私を溶かすように触れる
彼の手つきにためらいは無かった。

露木 紗世
(こんなの、だめなはずなのに……)

どこに触れられても気持ちいいのに、
もっと欲しくなってしまう。

露木 紗世
「っ……ごめ、なさ……」
日下部 恭也
「……ん? どうして謝るの?
何も悪いことしてないよ」
日下部 恭也
「だって、仕方ないんだから。
ごちゃごちゃ考えるだけ無駄じゃない?」
露木 紗世
「で、も……」
日下部 恭也
「……大丈夫だよ。
すぐにもっと訳分からなくしてあげるから」
日下部 恭也
「……だから、ね?
安心して僕に身を委ねて」

恭也さんの唇は、
生理的に浮かんだ私の涙を拭った後――

唇から首筋、鎖骨、そして胸元を伝って、
やがて全身にキスを落とす。

露木 紗世
(このまま、ぜんぶ……)

周囲には相変わらず、
おかしくなるほどの甘い匂いが充満していて。

たとえ、私が求めているのが【恭也さん】
ではなく【目の前のアルファ】だとしても――

とっくにぐずぐずになった頭では、
そんなことは全く気にならなかった。