棗 陽凪
「あー、やっと終わった!
まじで果てしなかったわ……」
棗 陽凪
「紗世がいてくれて助かったよ。
ありがとな」
露木 紗世
「どういたしまして!
じゃあ、次は後片付けだね」
棗 陽凪
「だな。とりあえず机は
全部元の位置に戻しておくか」

作業がしやすいように移動してあった机を、
手分けして戻していく。

露木 紗世
(……あれ?)

その途中、ふと近くにいた
陽凪くんの髪に糸くずのようなものが
ついているのに気付く。

取ってあげようと思って
何気なく彼の頭へ手を伸ばすと――

棗 陽凪
「っ!?」

鈍い音を立てて、勢いよく払い落とされた。

露木 紗世
「え……?」

一瞬、何が起こったのか理解ができなかった。

けれど手にはじんわりと
痛みが残っていて、
これが現実なんだと認識する。

露木 紗世
(さっきまで普通に話してたのに、
どうして……?)

混乱しているのは陽凪くんも同じのようで、
お互いに無言のまま見つめ合う。

棗 陽凪
「…………」

心なしか、彼は今にも泣き出しそうな
表情をしているように見えた。

露木 紗世
(もしかして、私が声もかけないで
いきなり触ろうとしたから?)
露木 紗世
(だとしたら、ちゃんと謝らなきゃ……)

そう思うのに、
喉が締めつけられたように声が出ない。