そのまま、彼の目が細められて――

気が付けば、身体ごと
プールの中に引き込まれていた。

露木 紗世
「……!」

驚きはしたものの、陽凪くんが
しっかりと腕をつかんでくれているから、
恐怖は感じない。

そして、程なくして身体が抱き上げられた。

陽凪くんの凪いだ海のような瞳の中に、
自分の姿が見える。

それくらい至近距離に、彼の顔があった。

私の髪からぽたぽたと水滴が落ちて、
陽凪くんの頬を濡らす。

けれど彼はそれを気にした様子もなく、
ただまっすぐに私を見つめていた。

露木 紗世
(……陽凪くんの手、あったかい)

私の背中や腰にはしっかりと腕が回されていて、
触れ合っている部分から
じんわりと彼の体温を感じる。

棗 陽凪
「……綺麗だ」

ぽつりと、陽凪くんがつぶやく。

露木 紗世
「え……?」

突然の言葉にきょとんとしていると、
陽凪くんは我に返ったかのように
慌てた様子で声を上ずらせた。

棗 陽凪
「ご、ごめんいきなり!
てか何やってんだ俺……!」

陽凪くんが私をプールに引き込んだことを
今更気にし始めたのがなんだかおかしくて、
つい笑ってしまう。

露木 紗世
「ふふ、びっくりしたけど大丈夫だよ」
棗 陽凪
「そっか、よかった……」

私が怒っていないことに安心したのか、
陽凪くんはほっとした様子で息を吐いた。