はぁ…………。

おやアレン、ずいぶん大きなため息ですね。

もしかして、例のドラマCDでなにかあったんじゃない?
ボク、まだ城主に聞かせてもらってないんだよね。

どうせアイツとうまくいかなくてへこんでんだろ。
オレのを聞いて勉強しとくべきだったな。

ルーのって、そんな参考になるくらいよかったっけ?

さて。少なくとも僕のよりよかったかといえば、疑問を持たざるをえませんが。

バーカ。
オマエらと違って、オレはアイツの気持ちを考えてだなぁ。

あれがお姉さんの気持ちを汲み取ったって言うなら笑っちゃうよ。
あんなに無理やり口に……

ほらほら、ふたりとも。いまはアレンの話を聞いてあげなくては。
アレン、いったいどうしたんです?

彼女を喜ばせてあげたかったのに、どうしてあんなことになったんだろう……。
俺は彼女に受け入れてほしかっただけなのに。彼女の熱を感じたかっただけなのに……。

お、おい! なにしたんだよそれ!!

受け入れてほしいとか熱を感じたかったとか、なんか表現が怪しいんだけど。

アレン、彼女となにがあったのか、もう少し詳しく教えてもらえますか?

……俺はあの女が誰とどうしようが、興味はない。

あ? オマエ、いたのかよ!

フッ、この程度の気配に気づけないようでは、
クズ石がこの城に侵入しても気づけるかどうか怪しいな。

おいアダマス。テメェ、オレにケンカ売ってんのか?

ちょっと、静かにしてよ。
そんなことより、アレンがお姉さんとなにをしたかでしょ。

彼女が庭園でクズ石たちに襲われてたんだ。
だから俺、やつらを粉々にしたんだけど、俺のせいで彼女がケガをして……。

なに!?

ハハッ、なんだよアダマス。
オマエだってクズ石に気づいてなかったんじゃねーか……って、アイツがケガだと!?

彼女が今も無事でいる以上、たいしたことはなかったのでしょうが……。
まさかそんなことがあったとは。

それで、いったいどうなったの?

だから俺、考えたんだ。どうしたら彼女を守ることができるのか。
彼女が安全で、しかもずっと一緒にいられる方法を……。

なんだよ、その方法ってのは。

俺の部屋を彼女の好きなものでいっぱいにして、部屋の外には
二度と出なくてもいいようにしたらいいんじゃないか、って。
それなのに、俺、うまく説明できなくて……。

え? それってもしかして、アレンの部屋にお姉さんを監禁したってこと!?

サフィ、物騒な表現はおやめなさい。
それにどうやら未遂のようですし。

どうしてあんなことになったんだろう……。
まさかあんなに泣かせちゃうなんて、俺、俺…………!

あの女を……泣かせた?

あー、なにがあったかちっともわかんねぇ!!
おいアレン、もっとはっきり言いやがれ!

そうだよ、もったいぶらずに結論から教えてよね。

うるさい…………うるさいうるさい、うるさーい!!

もうそっとしておいてくれよ! 俺が彼女となにをしようが関係ないだろ!
みんな勝手だよ…………俺がこんなに悲しんでるのに…………。

……やれやれ。こうなってはもう手がつけられませんね。
しかしどうやら、今回のドラマCDはかなり異質なようですね。

異質って?

彼女が怪我をしたのも泣いたのも、これが初めてです。
まぁそれだけなら、アレンの個性ゆえと言えなくもないかもしれませんが……。

どうした、はっきり言え。
……いったいなにを知っている?

初回に集まったとき、サフィが言ったでしょう?
「最後のドラマCDは、アレンの話と宝石大集合のような感じ」だと。

それがどうしたんだよ?

どうやらその「宝石大集合」のほうで、城主が彼女に急接近したようなのです。

はぁ? イミわかんないんだけど。
なんで城主がお姉さんと仲良くする必要があるわけ?

なんだ、あのおっさん!
宝石でもねーくせに!!

ぐすっ…………なんでエメルがそんなことを知ってるの?

残念ながらお教えできかねます。
……そうですね、さる情報筋から手に入れた、とだけ言っておきましょうか。

情報筋って?

フン、普通に考えればひとりしかいない。
おおかた、カードに勝った報酬としてでも聞き出したんだろう。

いえいえ、そんな手間はありませんでしたよ。
彼が若干ウキウキしているように感じたので、さりげなく水を向けただけです。
内心、誰かに話したかったのではないですか?

おっさん本人かよ!!

聞いた感じではおそらく、吐息がかかるほどごく間近で彼女に触れ、
なにかを囁いたのでは……と。

…………。

そんな……城主までが俺の知らないところでそんなこと……!

まてまてまて! オレだって負けてねぇよ。
出番は短いけど今回もすごいぜ!
なんたってアイツがオレを呼びに来たとき……。

それ、城主と張り合ったってなんの意味もないよね。
それにたぶん、お姉さんが一番気を許してるのはボクじゃないかなぁ。
今回、お姉さんがボクを呼びに来たときに十分そう感じられたけど。

フッ、子ども扱いされているだけじゃないのか。

っ!!

おっ、めずらしく意見が合うじゃねーか!
ガキがどんなに頑張ったところで、結局は限界があるよなー。

いえ、油断は禁物だと思いますよ。
サフィのアドバンテージは思いのほか大きい。

僕など、以前よりも彼女に警戒されるようになってしまいましたから。

ハッ、自業自得じゃねーか!

むしろ、おまえ自身がそれを望んだんだろう?

ええ、まぁ。ただ実際に態度でしめされると、ことのほか堪えましたが。

そういうアダマスはどうなんです?
彼女は君のところにも呼びに行ったのでしょう?

特に話すようなことはない。
…………ただ、あの女の無様な姿を見せられただけだ。

無様な姿って、どんな?
それでアダマスはどうしたの?

それは…………。

お、なんだよ。
やっぱ、なんかあったんじゃねーのか?

みんな……みんな、なんなんだよおおおおおぉっ!!

うおっ!?

ちょっと、びっくりさせないでよね!

なんなんだよ、もう!
最初は俺と彼女についての話だったのに、いつの間にかみんな自分の話ばっかり……!

オマエがそっとしておいてくれって言ったんじゃねーか!

そうですよ。それに我々には、「宝石大集合」の内容にも触れるという
城主から課せられた義務がありますから。

それなら俺だって……彼女は俺のことも呼びに来たんだ……。
広間で城主が待ってる、って。

それならよかったじゃない。
ひとりだけ呼ばれなかったわけじゃないんだし、なんの問題もないよね?

まぁ、そうだけど……。

フン、くだらない茶番もこれでようやく終わりか。
城主もいったいなにを考えて、俺たちにこの不毛な会話を……。

まあまあ、いいじゃないですか。
おかげで姫君たちにも楽しんでいただけたことでしょうし。

ホントに楽しんでもらえたかなぁ?
けっこうグダグダだった気もするけど。

オマエが引っ掻き回したのもグダグダの原因だけどな。

……さて、そろそろ彼女が目を覚ます頃合いですね。
お迎えにあがりましょうか。

はぁ? なんで全員でのこのこ行かなきゃいけねーんだよ。
オレが一番乗りに決まってんだろ!

あっ、待てよルー。自分だけ行くなんてずるいぞ!
俺だって、彼女が起きるのをそばで待ってあげるんだ!

ちょっと!
今度はボクだけ置いて行かせたりしないからね!

おや、前回置いていかれたことを根に持っていましたか。
案外細かいことを気にしますね。

……アダマス。君はいかなくていいのですか?

行きたいなら勝手に行くがいい。

以前にも言いましたが、自分を偽っているといつか後悔することになりますよ。
それでは。

自分を偽るだと……?

…………。

……あの女に興味はない、が……
自分の部屋へ戻る前に立ち寄るくらいなら、してやるとするか。