フワリと、肩に温かいものがかかる。
触ってみると肩掛けで、振り返ってみると、

「……冷えますよ。秋もそろそろ半ばですから」

優しい笑顔でこちらを見る、卓さんがいた。

「どうかしたのですか? なぜ、急に庭などに?」
珠紀
「あ。いえ、別に」

なんだか恥ずかしくなって、私はそう呟いた。
独り言、聞かれてたかもしれない。
卓さんは何も言わずに、隣にいた。
何か話でもあるのかと思って、最初は緊張してたけど、やがて、そんな張り詰めた気持ちも溶けてしまった。
月明かりは冷たく、白い光で全てのものに影をつける。
背後では、相変わらず騒がしくて、温かい光があふれていて……。
それは、私がずっとほしかったものだった。