拓磨
「……立てるか?」

拓磨は、いつもは見せない優しい笑顔で、そう言ってくれる。

真弘
「腰抜かして、座りっぱなしってのは、ちょっとかっこわるいぜ?」

真弘先輩は、なんだか、恥ずかしさを冗談で隠すようにして。

拓磨
「立てないなら、手を貸してやるよ。これからは何度だってそうしてやる。だからいちいち恥ずかしがるな」

拓磨は、ちょっと怒ったようにそう言って、でもなんだか、その声音の底の方にはすごく優しいものが流れている気がした。
なんだか顔が熱くなって、きっと私は、顔を赤くしているんだろう。
私は小さくうなずいて、二人の手を取る。
二人の手は、温かくて、心強くて、思いやりに満ちているように思えて……。
なんだか、嬉しかった。二人が私のことを、認めてくれたようで、心が温かくなっていくような感じがした。
拓磨と真弘先輩の手が私を持ち上げて、立たせてくれる。
まるで、私の心に寄り添ってくれるように。