「あなたと一緒に食べる朝食は、不思議といつもより美味しく感じますね。……今日も、ぼくはあなたが好きですよ」
朝食後の紅茶を楽しみながら言葉にしてみれば、彼女は驚いたように目を瞠った。紅茶を吹き出しそうになったのか、軽く咳きこんでいる。
「な、なに。どうしたのよ、突然」
「言いたくなったから言っただけですけど」
なぜか警戒するようにじとりと睨んでくる彼女に、肩を竦めた。自分も大概人のことは言えないが、たまに素直になってみれば疑うような視線を向けてくるのはどうなのだろうか。愛情表現が解りにくいと言われる自分としては、これでも日々努力をしているのだ。離したくないなら、伝える努力をすべきだと兄にもよく言われている。
「それで? あなたはどうなんです?」
「え?」
「朝から熱烈な愛の告白をしたんです。あなたからお返しがあって当然でしょ」
「……もちろん、私も、だけど」
「ちゃんと言ってください」
焦る彼女の表情に意地悪な気持ちが込みあげて、自然と笑みが浮かぶ。
「…………私も、好きよ。今日も、明日も、ずっと」
その言葉に、喜びと驚きが同時に襲ってきた。要求したのは自分だと言うのに驚くなんて――驚くほど喜びを覚えるなんて、やはり自分はひねくれている。恥ずかしさを誤魔化すように目を伏せて紅茶を飲む彼女の唇に、予告なくキスをしようと思いつくのにかかった時間は数秒。
相変わらず今日も、ぼくは彼女に溺れている。