「……って、なに見てるんだよ。
こんな格好、もう見飽きてるだろ。……もしかして意識してるのか?」
朝、シャワーを浴びてリビングに戻ると、やけに熱心な視線を注がれた。シャツの前が肌蹴ていることが気になったのか、からかうような言葉を投げかけてみれば、ぱっと視線を逸らした彼女が悔しそうな顔をする。
「ち、違うわよ。……その、なんだかいつの間にか逞しくなっちゃったんだなって思って……」
「なんだよ、今さら」
「子どもの頃は私のほうが背が高かったのに」
「この歳になって、お前より背が低かったら問題だろ。相当へこむぞ」
「そうじゃなくて……子どもの頃の夢を見たの」
様子がおかしかったのはそのせいか、と納得した。肩すかしを食らったような気分になりながら、近づいて彼女の顔を覗き込む。
「……昔のオレのほうがいいとか言うなよ」
「言わないわよ。それに……男の人になっちゃったなとは思うけど、変わってないもの」
大事なところは全然変わってない。続けられたその言葉に、虚を突かれた。――同時に隠しきれない喜びを感じて、笑みが浮かんでしまう。
「……男として意識してるってのは否定しないんだな」
それを誤魔化すために答えの解っている問いかけをすれば、彼女はまた悔しそうな顔をした。
「……意識してるに決まってるでしょ、バカ」
ふいとそっぽを向きながら紡がれた言葉に、今度こそ笑みを隠すのは難しくて。彼女の顎に手をかけてこちらを向かせると、愛しさの代わりにキスをした。