このあとは学生同士で切腹人と介錯人に分かれ、
一通りの流れをおさらいすることになる。
ふと息苦しさを覚えた。
緊張で呼吸が浅くなってしまう。
虎之助君の提案に頷き返す。
私の緊張を察してくれたのだろう。
介錯人の使う刀代わりの木太刀を受け取り、
虎之助君と貞吉君の背後に控えた。
二人は指南役に教わったとおりに、
厳かな所作で切腹の演習をする。
ふと見渡すと、道場にいる少年たちの半数が
同様に腹を切る所作をとっていた。
みんな真剣な表情で取り組んでいる。
これは、死ぬための練習じゃないか。
そう意識すると、抵抗感が強くなる。
分かっているけれど、
不吉な光景が重なってしまって
背中に冷たい汗が伝い落ちる。
戦場には、介錯人などいたのだろうか。
兄上の最期は、
どれだけの苦痛を伴うものだったのか。
どれほどの覚悟で行ったものだったのか。
次第に息が苦しくなって、
目の前が暗くなっていった。