遠くからしか眺めたことがなかった
彼岸獅子の行列を、三郎たちについて
もっと間近まで行って見物する。

衣装は目に鮮やかで
お囃子の高揚感に心を掴まれて――
私はすっかり舞い上がって、はしゃいでいた。

帰り道。
真似っこをして踊りながら歩く私は、
当然、足元がおろそかになっていて……

三郎(幼少期)
「ゆずりは、危ない!」
ゆずりは(幼少期)
「ひゃっ!?」
山瀬与七郎(幼少期)
「大丈夫か?」
ゆずりは(幼少期)
「うん……」
三郎(幼少期)
「ったく、前見て歩けよなー」

転んで尻もちをついた私へ、
ふたりはそれぞれ手を差し出してくれた。

女の子相手に、はしたない。
そう怒られることも構わずに、
私を助けようとしてくれたんだ。

ゆずりは(幼少期)
「ありがとう、三郎さん、与七郎さん」

わたしは二人の手をとって立ち上がって、
優しい友人を持ったことを嬉しく思いながら
帰路を歩いた。

あの日のことを、ふたりも覚えているだろうか?

あれからの日々を考えると
またこうして一緒に歩いていることが、
奇跡のように感じてしまう。

そんなことをふたりへ打ち明けたら、
大袈裟だと笑われてしまうかもしれないけれど。